<strong>細野祐二</strong>●公認会計士。1953年生まれ。75年早稲田大学政経学部卒業。83年公認会計士登録。著書に『国際金融取引の実務』『株式公開の理論と実務』などがある。
細野祐二●公認会計士。1953年生まれ。75年早稲田大学政経学部卒業。83年公認会計士登録。著書に『国際金融取引の実務』『株式公開の理論と実務』などがある。

日本の会計も2011年には「国際会計基準」に完全統合する。しかし、今年はその是非が活発に議論されることになりそうだ。

それというのも、サブプライム問題に端を発した金融不安の原因として、会計制度、とりわけ「時価会計」の弊害に関する指摘が相次ぐようになり、欧米においても時価会計の見直し論が飛び出しているからである。

もともと会計は複式簿記が発明されてから、伝統的に「原価主義」が貫かれてきた。しかし、1995年以降、時価で評価すべきとの主張が欧米で強まり、現在の国際会計基準は時価が主流となったのだ。そして、実際の時価は(1)マーケットバリュー(市場価値)、(2)それに準ずる価格、(3)金融工学で計算した理論価格――で評価されている。

特に問題なのが金融工学を使ったデリバティブや証券化商品である。なぜなら、その時価は金融機関によって操作可能だからだ。

サブプライムローンは、その典型である。信用力の低い個人に貸し付けた住宅ローンを証券化し、格付け機関が最高の評価を与える。まさに“現代の錬金術”にほかならない。今回の暴走を通して、会計制度にも哲学や理念が必要不可欠であることが改めてわかってくる。

財務・会計を学ぶビジネスマンにまず手に取ってほしいものが『日商簿記3級 過去問題集』である。会計は、労を惜しまず、エンピツと電卓でバランスシートを作成してみることが大切なのだ。すると、決算書を見ても、間違いは感覚でわかるようになる。また、基本を会得すれば、最新の会計理論に向き合っても理解度が一段と増す。

基本と同時に歴史も知っておくといい。参考になるのは『シャウプ使節団 日本税制報告書』である。49年にGHQおよび日本政府の要請で来日したコロンビア大学のカール・S・シャウプ博士らが、地方各地を実地調査してまとめたものだ。

最高97%もの累進税率を見直したり、申告納税制度を提案した「シャウプ勧告」は日本の財産だと思う。たぶん彼は、アメリカではできない“理想的な税制”を占領下の日本で実験したのだろう。現在の税の骨格と会計実務の原点がここにある。