補助金は時間がかかりすぎる

――一方で、助成金や補助金もキャッシュフローの面では重要ですよね。
大量の九条ねぎが整然と加工されていく。

【山田】補助金については、六次化などの新しい事業に対して出すというのが多いですね。でも、うちは最初に4億円の投資をしたときは、ほとんど補助金をもらってません。最終的に機械を入れたときに、あてはまる補助金を4000万円ほどいただきましたが、施設に関してはもらってない。

補助金は申し込んでから支給されるまで時間がかかりすぎる。事業が1年遅れるからやめたんです。ある地域では補助金のメニューを見てから事業を考える農業経営者が多いと聞いてびっくりしました。順番が逆。事業プランを立てて、それに合致する補助金があったらもらってもいいと思います。

――補助金ありきではいけない、と。

【山田】そもそも京都市、京都府は農業があまり盛んではないから補助金の枠も少ない。僕ら、補助金が使えないのを前提にプランを考えました。先に補助金メニューを見てこれやろう、あれやろうと決めていたら絶対に失敗してたと思う。自分のビジョンなり、方向性が先で、それにハマった補助金を使うべきですね。

――法人格についてはいかがですか。個人の農家さんも、そろそろ株式会社にしなければいけないかなとか、農業組合法人も会社にしたほうがいいかな、と思案しておられる。どんな組織形態が望ましいのでしょう。

【山田】規模を拡大したければ株式会社で、現状維持なら現状でいいんじゃないですか。地域の集落を守るためだけで農業を続けるのなら、わざわざ法人に変えなくてもいい。個人で拡大する気もないのに法人格にするのはどうかな。もっとも、所得税は増えて、法人税が減っていく傾向なので、そのあたりのバランスは見ていかなければいけないでしょう。

――ずっと有限会社でやっておられるところもありますが、有限と株式の違いは……。

【山田】特にないと思います。有限会社は、2006年に廃止されて希少価値が出てきた。プレミア感があるかな。