初めて老眼鏡をつくるときに気をつけたいこと

眼科の専門医、平松類先生(彩の国東大宮メディカルセンター)

ケアをし続けても相変わらず手元が見えにくいようなら、リーディンググラス(老眼鏡)を準備すべきです。しかし、「老眼鏡をかけると老眼が進む」という人もいれば、逆に「老眼鏡を早めに作ったほうが進まない」という人もいます。これもいわば老眼にまつわる都市伝説の一つです。平松医師に聞いてみました。

「メガネ(老眼鏡)を使うともっと悪くなるから使わないと主張する方もいますが、それはまったくのデタラメです。メガネをかけたことが原因で視力は低下しません。老眼が1、2、3と3段階あったとして、1段階目でメガネを作って、2、3と進んだからといっても、それはメガネのせいではありません。たまたま進行中にメガネを使い始めたため、『メガネを作ったから進んだ』と思うだけなんです。逆にぎりぎりまでメガネを我慢して、3段階目まで進んでからメガネを作った人は、もう限界まで悪くなっているので次の段階には進まない。これを『メガネを作る方が老眼が進まない』と誤解しているだけです。しかし見えないのに我慢するよりも、早めに手元作業用のメガネを作っておくほうが、はるかに労働効率が上がります。進行したら、適宜メガネを調整していきましょう」

初めてリーディンググラスを用意する上で気をつけたいのは、最初は度数をきつめにせず、「疲れにくいメガネ」を目指すということ。ハッキリ見えるとその瞬間の満足度は高いですが、逆に疲れやすくなってしまうからです。

ここで気になるのが、すでに近視用のメガネを使っている場合です。リーディンググラスを単体で用意するのか、はたまた遠近両用(もしくは中近両用)にするのか、どちらがいいのでしょうか。

「5メートル以上離れた場所と、手元が1本のメガネで見えるのが『遠近両用』、2メートル先から手元までが見えるのが『中近両用』です。外出に便利なのが遠近、室内で使うことを優先するなら中近ということになります。これらは1つのメガネで遠くも手元も見られるので便利です。ただ、どうしてもゆがみが生じるので、最初は慣れが必要です。早めに作っておけば目が慣れるのも早くなります。70歳を過ぎてから急に遠近両用にしようとしても、なかなか慣れないこともありますから。

ただ、どうしても慣れない人や、車をよく運転するが、パソコン作業も頻繁に行うという方は、運転用のメガネと、パソコン用のリーディンググラスを分けているケースもあります。両用眼鏡に比べて疲れにくいというメリットがあります」

自分がどちらを選ぶべきかは、視力の状態とライフスタイルによるようです。