料金が不透明と言われる葬儀業界の中に、ティアを創業した冨安徳久社長はまさに徒手空拳で飛び込み、明瞭な価格体系と、故人・遺族側に立った葬儀内容で、消費者の心をつかんだ。創業17年目の2014年には東京証券取引市場1部に上場。もはや中小企業とは言えないが、冨安社長の経営哲学と手法は進化系と呼ぶにふさわしい。

ひとしずくの涙の尊さを感じる

「ティア(tear)=涙」という名前の会社がある。ひとしずくの涙の尊さを感じ、悲しみを和らげる会社でありたいという創業社長である冨安徳久(56歳)の想いが込められている。冨安が1997年にたった1人で立ち上げたティアは当時、画期的な葬儀社だった。

冨安徳久・ティア社長

創業の地、名古屋を中心とした中部地方の平均的な葬儀価格は当時、300万円だったが、ティアは費用の明細を明らかにすると共に、150万円以下に設定した。格安だからと言って葬儀に手を抜くわけではない。通り一遍ではなく、「そこまでしてくれるのか」と遺族が感動する葬儀を提供し、「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」になることを最高理念に掲げた。

これがお題目に終わらないように、社員の行動基準を「ティアイズム」としてまとめ、社員が絶えず携帯するように徹底した。

「かつて葬儀の主導権は葬儀社が握り、家の門構え、所有する自動車、故人の勤務先などで喪家をランクづけし、価格を決めるような裏マニュアルさえ存在する業界でした。お棺に入れるドライアイスや防腐剤さえ、仕入れ値の10倍の値で売りつける。私は葬儀社の利益を優先するのではなく、ご遺族の立場に立って、少しでも悲しみを和らげられるように、心を込めて仕事をしてきました」

と、語る冨安の言葉を裏付けるように、ティアは着実に成長してきた。2006年に名古屋証券取引所セントレックス上場を皮切りに、13年には東京証券取引所第2部に上場、翌14年には東証1部に格上げ、名古屋証券取引所第1部にも上場した。15年には売上高100億円を達成した。

現在、従業員も350人を突破、直営の葬儀会館は中部、関西を中心に44店、フランチャイズでは38店を出店、合計82店を運営している。2012年には関東にも進出、埼玉県に直営2店、神奈川県と茨城県にフランチャイズでそれぞれ1店ずつ出店している(2016年4月末)。

年間の葬儀件数も約1万2000件(うち直営で約8000件)に上り、平均の葬儀単価は約104万円だ。ティアのおかげだけではないが、近年では一般的な葬儀単価も143万円(ティア調べ)ほどに下がってきたが、それでもまだティアの方が安い。

また、入会金10,000円で「ティアの会」の会員になると、年会費、積立金は一切不要で、葬儀・法要の際に様々な特典が受けられる。しかも、この特典は本人だけでなく、家族や親族、友人も利用できる。会員数は27万5000人を突破、毎年約2万人ずつ増えている。