「話が違う」転職に失敗
【鈴木】私はそれまでヨーカ堂の社名も、総合スーパーの業種も知らないほど流通業に興味はありませんでした。友人が百貨店に就職したときも、「デパートのどこが面白いんだ」などと減らず口をたたいたくらいです。しかも、トーハンは大企業、ヨーカ堂は店舗数がまだ5店舗の中小企業です。トーハンの上司からは強く引き留められ、親兄弟も猛反対です。今から思えば、それだけ、仕事のやりがいを求めていたのでしょう。
ところが、話は急展開します。入社後に経営幹部に話を切り出すと、「いずれ将来の話だ」という。初めからその気はなく、単に人材がほしかっただけで、転職は失敗でした。
【稲盛】それは不思議な運命ですね。
【鈴木】ただ、「話が違ったから辞めます」とは意地でもいえませんでした。すべて自分の責任です。だからこそ、発展途上にあったヨーカ堂で、自分から次々改革を仕掛け、挑戦していきました。
仕事は販促、人事、広報と管理業務を何でも引き受けました。高卒者の採用で地方での知名度のなさをカバーするため、スライド機材を抱え、画像で仕事を紹介するビジュアル化の草分け的な試みをしたり、懸命に取り組みました。
モチベーションが上がるか上がらないかは、やはり自分の意識の問題だと思います。