人間の思考は、つい、凝り固まりがちである。とりわけ、国論を二分するような問題については、世代間の対立や、価値観の相違などが、乗り越えられない壁になってしまう。

そのような際には、お行儀よく、当たり障りのないことを言っているよりも、むしろ、その難しいところに勇気を持って突っ込んでいって、笑いに変えてしまうのがいい。

「笑い」を支えるのは、脳の、自分自身を客観的に見る「メタ認知」のメカニズム。ともすれば一つの見方に凝り固まりがちな思考を、メタ認知を通してやわらかくし、「次のステップ」につなげていくことができるのである。

指導者やリーダーと呼ばれる人たちには、特にメタ認知やユーモアが必要である。アメリカでも、自分自身のことを客観的に見て笑いに変える能力は、指導者にとって不可欠な能力と見なされている。

アメリカ大統領が、「コメディアン」になる日がある。毎年恒例の、ホワイトハウスで取材する記者たちが主催するディナーパーティー。これに参加した大統領は、面白いことを言って記者たちを笑わせなければならないのだ。

例えば、オバマ大統領の出生地をめぐって、共和党の大統領候補になったトランプさんが「疑惑がある」と盛んに追及していた時期に行われたこのディナーパーティー。オバマさんは、壇上に立つと、「疑惑に答えるため、初めて、私の出生ビデオを公開することにした」といきなり切り出した。

聴衆が身を乗り出して見守っていると、始まったのは、なんと、映画『ライオン・キング』で、王の息子シンバが生まれるシーン。会場の爆笑、それから拍手が続いた。

日本でもこんな文化は広まっていい。首相がコメディアンになる1日が、あってもいいのではないか。みんなの頭がやわらかくなるだろう。

(写真=AFLO)
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