だが、海老氏のアドバイスには、胸を突かれるものがあった。「まず、名刺を作ろう」「家にいないで外に出よう」「持ち前の英語力を磨こう」……。
「結局、私はずっと受け身だったんですね。ただ待っていただけだった。この2年間で、自分が本当に錆ついてしまっていたのだと気付きました」
外で他者と話す機会が少なかったせいで「声がちゃんと出ていない」と海老氏に指摘され、ボイストレーニングも受けた。ほかにも抱えきれないほどの課題を課せられた。それらをこなす忙しい毎日が訪れた。「気持ちがだんだん前向きになるのを実感しました」。
成果はすぐに表れた。
「特に功を奏したのは、社長宛ての直筆手紙です」。
面接の話が来るようになった。2カ月間に100通の手紙を書き、「会おう」と言ってくれたのは15社。それまでの2年間で20社だから、格段の進歩だ。うち4社で2次面接に進み、ついに中小機械メーカーから内定が出た。
「年収も希望をちょっと下回る程度」と満足の様子。夫人からも祝福されたという。
「自分から攻めたことが結果につながった」と滝本さん。老母を老人ホームに預け、今、新たなスタートを切る。
(共同通信フォト=写真 小原孝博=撮影)