実は現在、レゴはこれまで以上に消費者視点で製品開発を進める手法に挑戦している。それがレゴ空想だ。しかもそれは日本を拠点に進められている。

レゴ空想の仕組みでは消費者が自分の欲しいレゴ作品を投稿する。1000人以上の消費者(会員制)が作品に対する購入意思を投票で示すとレゴ社で商品化を検討することになっている。製品化第一号が今年2月17日に発売された。有人潜水調査船として世界一の潜水深度(6500メートル)を誇る「しんかい6500」をレゴ ブロックで表現したものだ(税込み4830円)。すでにブログやツイッターでも話題となり、通常商品以上の売り上げが期待されている。

プロジェクトの担当者によれば「しんかい6500」の投稿者や支持者はレゴの熱狂的ファンではないという。むしろ、製品化希望リストの上位に「Mr.Children」のミニフィギュアが挙がっていることが示唆するように、レゴ社はレゴ空想によって新規性の高い製品案と新しい顧客層を獲得しつつある。

「既存主要顧客の声を聞きすぎると新規ニーズを先取りする製品案に資源が投入されなくなる(イノベーターのジレンマ)」と指摘したのはハーバード大学クリステンセン教授だ。レゴ空想はこうしたジレンマを克服する手法として期待が持てる。

日本の玩具メーカーはゲーム機や現代版ベーゴマなど世界に通用する先進製品を生み出してきたのでレゴのデンマーク本社は日本企業に注目している。実際、1月に発売されたレゴニンジャゴーは日本のホビートイをベンチマークし通常より1年余分に時間をかけ世界商品化したものだ。こうした動きに加え、次に注目されるのが日本の先進ユーザーかもしれない。レゴ空想は日本のユーザーの発想力と組織化力を見える化する仕掛けでもある。日本発のユーザー革新と手法が世界的に認知されるか。今後に期待したい。