開発意欲と能力を持つユーザーを強く意識する
先日レゴ ジャパンに取材に行った。世界にはレゴ ブロックを使った遊びをこよなく愛する、多くの愛好家がいる。実は1990年代後半から、彼(女)らの活動に対するユーザーイノベーション研究者の関心が高まっている。その実態を調べるため日本法人を訪問したのだ。
世界の消費財メーカーの中でもレゴ社はユーザーと価値共創を行う仕組みづくりを最も積極的に展開している企業の一つである。同社はユーザーの中でレゴブロックに対する開発意欲と能力を持つ者を特に強く意識している。
2年前の夏、独ハンブルク工科大学で開催されたワークショップでレゴ社新規事業開発部門トップの次のような発言が紹介された。
「レゴ社の顧客の90%は同社が提供するパッケージを取扱説明書通り消費することだけを考えている。しかし残り約10%の消費者は自分好みのものを作りたいと思い、さらにそのうちの1%は他の人が購入したいと思う部品や作品を作るスキルを持っている。レゴ社は3200万人のユーザー基盤を持ち、その0.01%の顧客、つまり約3000人のユーザーが他人も欲しがるレゴ作品を作るスキルを持っている。他方、レゴの社内デザイナー数は150人。わが社には製品開発で創造性を発揮したいと考え、そのスキルを持っている人間が社外に内部の約20倍の人数分、存在していることになる」
こうした「社外開発者」との共創関係をつくるべく、今では同社はユーザーの創造的活動を支援する仕組みを提供するようになっている。
ユーザーとの共創関係を構築する重要性にレゴ社が気づくことになったきっかけは98年発売の「レゴ マインドストーム」だった。マインドストームはマイコン(マイクロ・コンピュータ)搭載の自律型ロボット組み立てキットのことで、米MITと共同で教育用ロボット教材として開発された。