大統領はスマホから市民に抵抗を呼びかけた
7月15日、トルコでクーデターが発生した。エルドアン大統領がバカンス中の隙を突いて軍の一部が決起し、ヨーロッパとアジアを隔てるボスポラス海峡に架かる橋やアタチュルク国際空港などを封鎖。最大都市イスタンブールや首都アンカラに戦車や軍用機を展開し、国営テレビ局を乗っ取って戒厳令と夜間外出禁止令をトルコ全土に発令した。
一方、休暇中だったエルドアン大統領は標的になりながらも難を逃れてイスタンブールに戻った。途中、スマートフォンのテレビ電話アプリ・フェイスタイム(FaceTime)を活用してCNNトルコにテレビ出演し、スマホから「広場や空港に集まってほしい。人民の力に勝る力はない」と国民に反乱軍への抵抗を呼びかけた。大統領のメッセージにモスクも呼応して、「これは聖戦だ。神のために街頭に出よ」と訴えた。クーデター側が占拠した国営テレビ局を通じて「表に出るな」と外出禁止令を出したにもかかわらず、大統領の呼びかけに応じて人々は表に繰り出して、イスタンブールやアンカラの街はクーデターに抗議する群衆で溢れた。翌16日正午には反乱軍はほぼ鎮圧されて、クーデターは失敗に終わった。もともと準備不足、イデオロギー不足のお粗末なクーデター計画だったようだが、世論をコントロールする情報戦で形勢が決まったといえる。既存のテレビメディアを掌握した反乱軍に対して、エルドアン大統領はフェイスタイムやツイッターなどのソーシャルメディア(SNS)を駆使して国民を鼓舞することに成功した。もちろん本人が国民から支持されていることが大前提ではあるが、SNSがクーデター鎮圧の立役者になるご時世というわけだ。