「企業トップ」と「連続殺人鬼」……。一見、両極端の人格であるように見えるが、心理学的には深い共通点があった。

トップになるのに有利な“性格”とは

――「冷酷」「恐れを知らない」というようなサイコパス特有の性格は、生まれつきのものでしょうか。
オックスフォード大学教授 ケヴィン・ダットン●1967年、ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学セント・エドマンズ・カレッジのファラデー科学・宗教研究所を経て、オックスフォード大学実験心理学部教授。著書に『サイコパス 秘められた能力』(NHK出版)

【オックスフォード大学教授 ケヴィン・ダットン】ある程度はそうだと思います。乳幼児期から、サイコパス気質である人と、そうでない人の脳を比べると、違いが実際に多く見つかっています。しかしそういう性格は必ずしも精神に刻み込まれたものではありません。後天的な理由で、冷酷な性格や恐れを知らない性格になったり、リスクを人よりも多く取るというサイコパス的な性格になる場合もあります。

――会社のCEOは、サイコパス度が高い職業調査でトップに選ばれました。CEOのサイコパス度が高いのは、サイコパス度の高い人が出世したからでしょうか。あるいは、肩書がその人のサイコパス度を高めたからでしょうか。

実際はその両方の要素が影響していると思います。権力のある地位につくと、すべての人がそうなるわけではありませんが、相手の気持ちを理解する力が下がることを示唆する証拠があります。

私の研究では、いかなる専門職でも、成功するには2つの要素が必要であることがわかっています。一つはその仕事をするのに必要な「スキル」で、もう一つはそのスキルを最適に運用できるようにする、いくつかの「人格」です。

ビジネスを例に取りましょう。財政上の洞察力、企業経営能力、あるいはMBAなどの「スキル」を持っていたとしても、それだけでは不十分です。「スキル」を実際に運用するための「人格」として、「必要なときにリスクを取る能力」や、「緊急時、重要な問題に集中する能力」「失敗のあと回復するメンタル面の強さ」が必要です。またときには従業員を解雇することも厭わないような「冷酷な性格」も必要です。これらの人格のうち、どれかが欠けていれば、CEOになれる可能性は低くなります。

ですから、サイコパス度がもっとも高い職業がCEOであることは驚くべきことではないと思います。もちろん、そうであるからといって、すべてのCEOがサイコパス的なわけではありません。トップになるにはサイコパス度が高い性格であることが有利で、それを適切な状況で使うことが必要である、ということです。