――仕事で良い結果を出すための「最適なサイコパス度」というものは存在するものでしょうか。

それはどのような職業であるかによります。ビジネスについてはすでに話した通りです。

CEOと同様、サイコパス度が高いという調査結果が出た外科医を例に取りましょう。トップクラスの腕を持つ外科医は、自分が手術する患者の気持ちにはなりません。一旦、自分が手術する患者の気持ちに共感してしまったりしたら、手術の判断が鈍ってしまうからです。それは、非常に危険なことです。外科医は患者の命を預かっているので、瞬間の判断を間違えると患者が亡くなるからです。

弁護士も同じです。いくら法律や事実を覚える能力があっても、法廷で注目の的になるほど、自信にあふれた弁護士でないとうまくいきません。だから、サイコパス度が高い弁護士が成功するのです。

年収が高い職業と年収が低い職業の違いとは?

――年収とサイコパスの関係について。サイコパス度が高い職業と低い職業(表)を比べると、サイコパス度が高い職業のほうが、平均的には年収が高いようにも見えます。なぜでしょうか。

年収とサイコパス度の関係については、我々が今まさに大規模な調査を行っている最中です。あなたが言っていることが正しい可能性は非常に高いと思います。

もしそうなら、収入が高い職業は、プレッシャーが高いからであると説明できます。プレッシャーが高い仕事は責任が重く、その分収入も高いということです。責任が重い職業の人は、リスクを取る能力も必要です。プレッシャーやリスクに強いというのは、サイコパス気質の良い特徴の一つです。

――現在、社会全体として、サイコパス度が高い人は増える傾向にあると思われますか。それとも、減る傾向にあると思われますか。

社会全体としてサイコパス度が高くなっていることは確かです。最近アメリカで発表された研究では、「今の大学生は30年前の大学生と比べて共感力(empathy)が40%低い」という結果が出ています。社会が進むスピードが以前よりもかなり速くなっていることが影響していると思います。それによって瞬間的な判断が求められるようになり、思考が浅薄化しているということです。ですから後天的な理由でサイコパス的になる人が増えていると思います。

それは決して社会にとって良いことではありません。サイコパス的な人たちにより、社会的には金融危機などが引き起こされるからです。しかし、ここにパラドックスがあります。金融危機を引き起こすようなサイコパス的な人格はまさに、社会を繁栄させるために必要な人格でもあるからです。