「あきらめた」だけでなく、「変化」を嫌うようになった若者

価値観セグメント(4Cs)別構成比 (18~29歳)©電通ヤング&ルビカム Brand Asset Valuator

価値観セグメント(4Cs)別構成比 (18~29歳)©電通ヤング&ルビカム Brand Asset Valuator

上で見てきたのは、18歳~69歳全体というBAV調査にて設定された「全体」の姿である。それでは、いわゆる若者はどうなったのか?車に乗らない、酒を飲まない、海外旅行にも行かないなどと言われがちな最近の若者であるが、彼らの実態はどういうものなのか。ここでは、やはり1997年時点と2010年を比較することで、その価値観の変化を見てみることにする。

グラフからも見てとれるように、残念ながら全体に見られる傾向は、若者(18~29歳)で一層顕著なものであった。1997年には「あきらめ派」は2%というごくごく少数の、何か特殊事情でもあるのかと思えるような一部の層でしかなかったが、2010年にはその7倍に増え、全体の14%にまでなってしまった。「苦闘派」と合わせると、3人に1人になってしまっている。同時に「上昇志向派」が大幅に減っていることは、サンプル全体と同じである。

また、一層問題を投げかけるのが「探検派」が半減していまっていることである。この層は、個性を尊重し、リスクを恐れず社会に対して挑戦する、フロンティア精神をもつ層と定義され、時にはルールを破ってまでも変化を志向する層である。ブランド選択も感覚的な直感に基づいて行う層で、新製品をトライするのもこの人達である。1997年では18~29歳の4人に1人が、まさに「若者」というか「若さ」を代弁するかのようなこのセグメントであった。全体サンプルでは1割なので、やはり若い層に多いことがわかる。ところが2010年では25%から13%に大幅にダウンした。

ナナロク世代(1976年生まれ)と呼ばれ、今のネット系の会社を興し日本に新しいビジネスモデルを作り出してきた面々は、1997年時点では二十歳前後。まさに「探検派」のメンタリティーをもって新しいものにチャレンジしてきた層であると言えよう。ところが、その後に続く世代はそういった挑戦、変化を重視する価値観を継承していないと見るべきであろう。若者イコール変化を好む、即ち新しいものに飛びつく、だからそこに向けて「鮮度」の高い情報を送り続ければ新製品が売れるという図式は残念ながらリセットされてしまったと考えるべきであろう。スマートフォンやタブレットの使用率を見ても、今の20代より、「もと若者」である30代40代の使用率の方が高いのもうなずける。皆さんの周りを見回してもそうだと思うがいかがだろうか。

次回からは、価値観の変化がどういった製品カテゴリーに影響を与えているかを見て行きたい。