そこで話を聞いてみると、どうやら分不相応に子供にお金をかけている現状が浮かび上がってきた。多くの場合、「ひとりっ子」家庭では、子供にお金をかけすぎる。しかも長尾家の場合、2年ほどの不妊治療の末に授かった、待望の子供であり、溺愛ぶりはさらに度を越していた。ベビーグッズや服は山ほど買いそろえ、小学校は私立へ。子供が「やりたい」と言った習い事はすべてやらせた。ただ、そうした子供にかけるお金以外にも、全体に浪費傾向があるとも想定された。高額所得家計にありがちなことだ。

家計をよりよい方向へ持っていくには、夫妻の視点を変えてもらうしかない。具体的には「家計三分法」を紹介した。お金を何のために使ったかを意識してもらうのが目的だ。分類は「消費」「浪費」「投資」の3つ。それぞれの意味合いと、目安としたい配分は図を参考にしていただきたい。

お金を使ったら、レシートをそれぞれの箱に入れていく。そして月に1回、月末などに家族会議を開き、分類の仕方は適切か、見直した結果の配分率はどうか、などを確認。子供の教育費とて、例外なくこの審判を受ける。だからこそ、会議には子供も参加する。

その結果、まず子供の習い事はジュニア英会話、レゴ教室、ピアノ教室、体操教室とあったが、ピアノと体操はやめて、英会話はタブレット端末を使う通信式のものに変更した。さまざまな教室に通う時間や労力が減り、子供も親も喜んでいるという。

また「子供にはいいものを食べさせたい」と考え、有機野菜の宅配サービスも利用していた。ところが、食べきらないうちに次の商品が届くなど無駄が多く、これを改めた。

ほかにも生命保険を見直し大きく支出を削ったが、被服費と理美容費の高さも気になるところだった。被服費は、子供にかかる部分も少なくなかったが、どうやら妻にかかる部分も多いとのこと。しかも、その背景には「妻にはいつまでも美しくいてほしい」という夫の願いがあった。当初、夫はこれを削ることに否定的だったが、家族会議を経て、見直すことを了承した。

これでようやく長尾家は、毎月10万円以上の余剰金が生まれ、年間約100万円のボーナスの多くを貯蓄へ回せることになる。今後も「消費」「浪費」「投資」を冷静に判断できれば、“家計崩壊”とはならないだろう。

家計再生コンサルタント 横山光昭
マイエフピー代表取締役社長。「消費」「浪費」「投資」で仕分ける家計管理の考え方が大反響を呼び、庶民派ファイナンシャルプランナーとして、9000件以上の赤字家計を再生。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズ、『「貧乏老後」に泣く人、「安心老後」で笑う人』などベストセラー多数。
(小澤啓司=構成)
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