田舎暮らしに失敗する人の共通点

自分でワインをつくりたいとなると、醸造施設が必要となり、それには3000万円くらいかかります。いまのところ日本のワイン醸造事業において、リース利用やアウトソーシングは一般的ではありませんが、今後それらのシステムが整えば、コストを減らすことが可能です。リースのシステムが整えば、たとえば3000万円を一括で支払うのではなく、毎月30万円ずつ10年間支払うといった選択も可能になり、そうすれば初期コストが少なくてすみます。開墾やボトリングなどは、海外では高い機械を買わなくてもリースやアウトソーシングが一般的です。

ワインの出荷風景

海外ではすでに普及している貯蔵庫専門のアウトソーシング会社が日本にもできれば、小さなガレージでお店を開くこともできます。一軒だけでは集客力は弱いけれど、そうしたお店が10軒集まれば、人が来てくれるようになります。

ところで、田舎に来たからといって、無理に愛想よくしたり自分を変えたりする必要はありませんが、見ていると、都会の価値観を引きずっている人は、田舎に引っ越してきてもうまくいっていない。田舎の風習がばかばかしく思えて、「オレが田舎を変えてやろう」と言ったり動いたりして地元の人と衝突していますが、そういう人は地元からは嫌われます。「郷に入れば郷に従え」です。

最初は私も、田舎の風習というのは古いし合理的ではないぞ、と思ったりしたものですが、寄り合いに出たり、一緒に草刈り作業をしたり、暮らしながらワインづくりを続けるうちに、長い歴史があり、何らかの理由があってそうなっているのだなと、田舎の価値観が理解できるようになりました。そして、だんだんと地元の人たちに「よかったらうちの畑を使ってくれ」と言ってもらえたり、野菜を分けてもらえたりするようにもなりました。

20年以上経ったいまでは、みんなと一緒に村おこしをやっています。時間はかかりますけれど、信頼関係を築くことが大切なのです。

玉村豊男(たまむら・とよお)
1945年、東京都生まれ。都立西高、東京大学仏文科卒業。作家、エッセイスト、画家、ワイナリーオーナーなど数多くの顔を持つ。2004年から長野県東御市でヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーを経営。http://www.villadest.com/
(野崎稚恵=構成 永井 浩=撮影)
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