「風頼み」選挙は風が吹くとは限らない
選挙でよくいわれるのが、「ドブ板選挙」。1軒1軒戸別訪問し、お願いして回るやり方だ。有権者と1対1なので、効率が悪いと思われがちだが、地道な努力は口コミで広がり、確実な票読みの材料となる。「生活の党と山本太郎となかまたち」の小沢一郎共同代表が、ドブ板で培った人脈を活かし、農村部でミカン箱の上に立ち、辻立ちをすることで知られている。「川上から川下へ」と呼ばれるこのやり方は、辻立ちが都市部に入る頃には大きなうねりになると言われているからだ。このドブ板も、辻立ちもベースにあるのは、名簿の存在があってこそ、なのである。
最近の選挙は「風頼み」と呼ばれることがあるが、風は吹くとは限らない。ましてや、地方議員選挙にはあり得ない話といっていいだろう。だから、着実な票の積み重ねが求められるのである。
戸別訪問、電話でのお願い……。地道な努力こそが、何よりも大切なのだが、一方で時代を感じさせるエピソードもある。
選挙プランナーが語る。
「3年前からネット選挙が解禁になりましたが、まだまだ規制が多いのでやりづらい面があります。たとえば、選挙期間中は電子メールや携帯のショートメッセージは規制対象となっています。ところが、ラインは新しいツールで対象外。だから今はライン作戦で一気に巻き返しを狙っています」
投票日前日の最後のお願いが、ライン。まさに時々刻々と変わる社会情勢に乗った新作戦といえるのではないか。ちなみに、電話のお願いは最近、効果が薄れているという。
「オレオレ詐欺が社会問題化してから、知らない電話番号からの電話には出てくれないようになったり、勘違いして警察に通報されそうになったりしたこともありました。もう電話ではない時代なんですよね」
思わぬところで、事件の影響があるのだという。とはいえ、電話でもラインでもベースになるのは、名簿なのである。時代に変わりなく必要とされているのは、名簿ということなのだ。さらに最後は、やはりフェイス・トゥ・フェイスがモノをいうという。
「忙しい中で、候補者本人が支援者、有権者に語りかけ、握手をすれば、情が湧きますよね。有効な支援者にそれをして、『やっぱりアイツはいいヤツだよ』って周りに言ってもらう。このアナウンス効果って、効きますよね」(ある選挙事務所スタッフ)
甲乙つけがたい商品の場合、販売担当者の印象で決めることに似ているだろう。しかも、口コミ効果はまさに、ビジネスと共通している点だ。最新のツールを使いつつ、昔ながらのドブ板選挙など手練手管も必要だということだ。