選挙運動期間中、金品の受け渡しはご法度

選挙には、さまざまな役回りの人たちがいる。選挙を扱った小説『当確師』(真山仁・著、婦人公論新社)に登場するような選挙コンサルタントもいれば、秘書だったり、ボランティアだったり。そこで、選挙事務所のスタッフと役割を見てみよう。

衆院選や知事選などの大きな選挙の場合、選対本部長という肩書きの人が鎮座していることがある。地元選出の国会議員だったり、古株の県議というケースが多い。ある意味、この人たちは“名誉職”。地元ネットワークで「私が応援しているから、よろしく頼む」という役柄だ。事務所によっては、置いていないこともある。

続いて、事務局長。実質的な選挙事務所統轄者と見ていい。選挙を熟知する人で、人の差配や選挙動向のチェックをしながら、今後の戦略を指示していくゲームメーカーだ。アメリカンフットボールに例えれば、攻撃の要、クォーターバックといっていいだろう。

そして、実働部隊に秘書やボランティアスタッフといった具合だ。秘書は各メディアから依頼されたアンケートの書き込みだったり、相手候補の情報を収集したり、選挙カーのルートを作ったりする。また、地元の支援者と候補者を結ぶ役目も担っている。ボランティアは、名簿を元にして投票の“お願い電話”をかけまくったり、ハガキの宛名書きをしたり、来訪者へのお茶出しをしたり。

写真はイメージです

ところで、『当確師』では、こんな一節がある。

<そもそも日本では、選挙コンサルが真っ当な報酬を受け取りにくい法律になっている。告示した段階で、候補者の周囲で報酬を受け取れるのは、ウグイス嬢や運転手くらいだ。>

そう、選挙の大きなルールとなる公選法では、選挙運動期間中、基本的に金品の受け渡しはご法度。選対本部長も事務局長も秘書もスタッフも皆、無給で働いている。ウグイス嬢や運転手は例外的に認められているに過ぎないのだ。

では、この中に選挙コンサルタント、選挙プランナーと呼ばれる人たちはどうなのか。もちろん、告示前までに契約を結び、報酬を得ることはあるが、期間中は事務所に入っても名目上はやはりボランティアスタッフということになる。