中古マンションなら、新築の3分の2の金額で済む
【田原】中古マンションを買ってリノベーションすると、新築を買うよりどれくらい安くなりますか。
【山下】同じエリアなら、リノベーション費用も含めて約3分の2で済みます。3分の2で買えれば、残りの3分の1で人生を楽しむこともできます。これを私たちは「3分の1のバッファ」といっています。
【田原】3分の1のバッファですか。面白い言い方ですね。
【山下】日本は家を買うために車をあきらめたり、習い事をやめたりする人も多いですよね。それは家を買うことがゴールになっていて、他を犠牲にしても構わないという考え方があるから。でも本当は、家は道具にすぎません。人生を楽しむために、家という道具をうまく使いましょうというメッセージを込めています。
【田原】1つ気になることがあります。ローマやパリには、築100年とか150年のマンションが結構あります。でも、日本の住宅は50年持たないと言われている。築30年でリノベーションをしたら、しばらくしたら建て替えが必要になって、余計にお金がかかったりしませんか。
【山下】建て替えが必要になるのは戸建ての木造住宅の話で、25年前後で建て替えられるケースが多いです。ただ、RCという鉄筋コンクリートのマンションは100年持つといわれています。実際、日本でマンションが建て替えられた例はほとんどありません。日本では新しいもののほうが安全だという新築神話がありますが、マンションも同じイメージがついてしまっている。そこは変えていきたいです。
実業団ラグビーから現場監督に
【田原】リノベーションと出合う前の話を聞かせてください。山下さんは中学、高校、大学とラグビー選手として活躍して、実業団にもお入りになったそうですね。ラグビーで食べていく自信があった?
【山下】ありました。でも、社会人ではまったく歯が立たなかったです。僕は身体のサイズが小さくて、トップの人たちが集まってくるところで通用しなかった。1軍は東京にあるのですが、僕はそちらに合流できなくて、勤務先は大阪。結局、心が折れて1年でやめてしまいました。
【田原】ラグビーをやめただけでなく、会社もお辞めになった。
【山下】会社は「ラグビー入社」のようなものでしたから。それまでラグビーしかやってこなかったので、なんと言うか、何もなくなって真っ暗になったような状態になって。人生で一番つらい時期だったかもしれません。
【田原】退職後はどうしたのですか。
【山下】とりあえずラグビーの先輩を頼りにゼネコンで現場監督のアルバイトを始めました。現場監督といっても単なる雑用係ですが、仕事ぶりを認められて正社員に。登用後に配属されたのが企画部門でした。企画はゼネコンの中で花形といわれる部署で、土地を取得してくるのが主な仕事。いわゆる「地上げ」です。