生け花は経営と同じ「何を残し何を切り落とすか」
例えば、小林製薬代表取締役社長の小林章浩さんの作品タイトルは「的(まと)」だ。
「常に仕事の目的を考え、その日の目標を持つことを信念としている小林さんは、『的』を菊で表現。葉を落とし、何輪かをギュッと束ねることで明確なインパクトを与え、目的、目標を持つことの重要性を説いていました」
丸井グループ代表取締役社長の青井浩さんのタイトルは「静けさと調和」だ。
「深さ10cmほどの花器に水を張り、それを泉に見立て、水面ギリギリに草木を這わせ、水面には一輪の花。水底には竜を眠らせるなど、まるで神話の世界を見るような神秘的な作品を創り上げました」
州村さんはこう続ける。
「どの作品も私からの細かいアドバイスはほとんどありません。表現したいことが明確で、それを形にするために何をどう使うべきか。その的確さとバランス感覚は、プロの私から見ても目を見張るものがありました」
州村さんが想像を超える高い完成度で個性的な作品を創り上げた27人のトップリーダーからは以下のような声が聞かれた。
「花一本の長さと活ける角度を変えることで、どんどん表情が変わるのが楽しかった」
「枝葉のどれを落として、どれを残すかを真剣に考えてからハサミを入れるのは、まさに(社員の適材適所の配置や、予算投入のバランスなどが重要な)経営と同じ」
「派手であればいいというわけではない。余計なものをそぎ落としたときにこそ、花の本質が浮き上がり、美しさが引き立つものだということがわかった」
黙って自分の「核」と向き合い、その世界観を表現する。生け花は、ビジネスに必要なスキルを身につけることができる、とリーダーたちは異口同音に語ったのだった。
なお、この州村さん主宰のリーダーたちによる作品展は、今年末にも開催する予定だ。これにより、経営者だけでなく、ビジネスパーソンの生け花愛好者もさらなる広がりを見せるかもしれない。