機会の良否・可否を正しく判定する能力
孫子の兵法には、「百戦百勝するのは善の善にあらず」という有名な言葉があります。しかし、孫子はではどうすべきなのかという点で、記述がやや抽象的で分かりにくいです。
曹操の先の反論は、その答えを見事に教えてくれています。
勝者であり続けるには「機会の良否・可否の判定になにより習熟すること」が重要なのです。状況から言って、成功確率の極めて低いはずの機会を、大チャンスだと勘違いすれば、どんなに戦い方が巧みでも、苦戦や敗戦を免れることはできません。
逆に勝者になるには、「戦えばそれだけで簡単に勝てる」機会であることを見抜けることがポイントになります。進軍を決定すれば、あとは戦い方の問題ですが、成功の確率が極めて高い時に限り決断をするならば、戦い方が完全ではなくとも、勝利を得ることはたやすいのです。
曹操は若き日の劣等感をバネに実力主義に傾倒し、自らの武技と知恵を力とする兵法を熱心に研究しました。彼は研究の結果、機会の良否・可否を正しく判定する能力が兵法の最大の焦点だと見抜いたのです。曹操はこの力を得たことで、乱世を平定して三国時代の最強の英雄にのし上がっていくことになります。