「マイクロハーブ」という新野菜も発売
O-157騒動という不幸を奇貨として、かいわれ大根から豆苗にシフトした村上農園は、さらに進化する。
1997年に米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のポール・タラレー教授がブロッコリーの新芽に含まれるスルフォラファンにがん予防効果があることを発表した。村上農園の米現地法人でこれを聞いた秋人は、清貴と共に直ちにタラレー教授を訪ね、特許ライセンス獲得の交渉を行った。
当初はまるで相手にされなかったが、何度も通い、村上農園の実績と思いを理解してもらい、99年に日本国内の独占ライセンス契約を締結した。これで発売されたのがブロッコリースプラウトである。その話題はマスコミでも取り上げられた。2001年にはブロッコリースーパースプラウトを発売する。
以来、村上農園はこれまで日本になかった機能性野菜に力を集中してきた。現在、同社が機能性野菜でトップを走っているのは、自社で検査設備を整え、商品の成分量を定期的に検査し、加えてジョンズ・ホプキンス大学でも検査を行うなど、品質管理が徹底しているからだ。同じブロッコリーのスプラウトでも他社製ではスルフォラファンの含有量が少ない場合がある。
清貴は2007年に社長に就任。大胆な発想と行動力で、村上農園を引っ張ってきた。2011年には当時の売上高30億円の半分にも相当する資金を投じて、山梨県に最新工場を建設。そこから売り上げが急拡大していく。
「先代が培ってきた風土を壊す必要もありました。以前は品質よりコスト優先になりがちでしたが、私が社長になってから品質重視、お客様第一で、価値を高めることに注力してきました。ようやく、社員の意識も変わってきたようです」と清貴は語る。
秋人は残念ながら2014年に亡くなったが、いままでにない価値を世の中に提供したいという秋人の思いは清貴の中で生きている。
新しい挑戦として、オランダの企業と提携し、「マイクロハーブ」という新ジャンルの野菜を今年から本格的に販売する。マイクロハーブは、これまで日本になかったハーブ類も含めて、発芽まもない若採りのハーブ。色鮮やかで、甘みや辛み、塩味などいままでにない味と香りを楽しめる。料理の見た目もよくなるので、まずはホテルやレストラン向けの高級食材として提供する。
また、これまで生産拠点のなかった東北、北海道、四国にも順次、拠点を展開予定だ。
「日本の専業農業人口は20年も経てば半減してしまいます。その中で、当社は日本の農業の中核を担う会社でありたい」
清貴は、日本の農業の将来を冷徹に見据えながら、日本にとって有用な取り得る道を模索している。
(文中敬称略)
●代表者:村上清貴
●創業:1978年
●業種:豆苗、スプラウト類の生産・販売など
●従業員:380名
●年商:58億9900万円(2015年12月期)
●本社:広島市佐伯区
●ホームページ:http://www.murakamifarm.com/