【5】上に立つ人材は数字だけで読めない

人の能力はある程度のポジションまでは数字で読めるが、それ以上はわからないと古森会長はいう。それは求められるものが違ってくるからだろう。

若手部長までは、見た目の印象や、発言の内容、考え方など顕在情報あるいは断片情報でその人の優秀さがわかる。営業の成績や仕事の出来具合といったものも顕在情報の一つだ。けれども、部長以上で成長する人材はそれだけではわからない。部長から先は、歴史とか文学などの教養、要するにリベラルアーツを身につけ、大局観を持っていないと伸びない。

歴史観や大局観、それに加えて志と体力がないと、部長になった途端、「この役職で十分」とそのポジションに安住してしまう。本来なら、そこから大きく伸びなければいけないのだろうが、人間としてのスケールが小さいため、それ以上成長できないのだ。

人間を業績などの数字で測れるのは初任部長まで。それ以上は数字では見えない世界ということだろう。

富士フイルムホールディングス代表 取締役会長兼CEO 古森重隆
1939年、旧満州生まれ。63年東京大学経済学部卒業後、富士写真フイルム(現・富士フイルム)入社。2000年代表取締役社長、03年代表取締役社長兼CEOに就任。現在は、富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO。
(Top Communication=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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