決算書は敷居が高いというビジネスマンも、ここだけ見れば企業の業績がわかるエッセンスを紹介。
自社や取引先の実績を知るためには、まずBSの純資産の部にある利益剰余金に注目したい。利益剰余金は、すべてがキャッシュや預金として残っているわけではないが、企業が創業以来、利益をどのくらい積み増してきたのかを見る重要な勘定科目である。ちなみに“内部留保”と呼ばれることも多く、麻生太郎財務大臣の「過剰な分を削り賃金に回すべき」などの発言の基になったりもした。
しかし、決算書による経営分析のポイントは、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)を単独で見るのではなく、結び付けて読むことである。
CF計算書の最後の科目である手持ちキャッシュの期末残高は、BSの資産の部の最初の勘定科目である現金及び現金同等物(企業によっては現金及び預金)と基本的に同額。利益剰余金はPLの当期純利益が反映される。つまり、BSを中心にPLとCF計算書という3つの決算書は結び付いているわけだ。決算書のひとつの勘定科目の数値を操作すると、財務3表のいずれにも関連してくるため、ウソがばれやすいということでもある。
企業の財務分析に欠かせない借入金の額ひとつをとっても、PLには利息が反映されるだけである。BSの借入金の増減額とリンクしなければ企業の本当の姿は見えてこないといっていいだろう。それぞれの勘定科目を単年度ではなく、少なくても3期、できれば5期の流れを確認するようにしたい。
加えてPLの売上高、BSの在庫(棚卸資産)、有形固定資産をチェックしよう。上記の表は、これら3指標について、5期分の推移を示したものである。09年度を100として計算すると、伸び率や縮小率がたちどころにわかるだろう。有形固定資産は、店舗の資産価値と考えればいい。
靴販売チェーンのABCマートと「無印良品」の良品計画は、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングとともに専門店の勝ち組。売上高は09年度から毎年度右肩上がり。それにともない、在庫や有形固定資産も増えているという図式だ。良品計画の場合、13年度は在庫も有形固定資産も急伸。積極策を推進したことが見て取れる。
一方、不振を極める某社Xは、売上高の縮小にともない、在庫も減少。有形固定資産にいたっては、ゼロになっている。これは店舗はあっても、店舗への投資が回収不可能ということで、専門的にいえば減損会計処理をしたためだ。某社Xは企業の継続が危うい状態にあるといっていいだろう。