日産自動車は、三菱自動車をコントロールできるのか……。
日産が約2000億円を投じて三菱自の第三者割当増資を引き受け、三菱自は実質傘下に入る公算が強まった。日産とすれば燃費データ改ざん発覚の三菱自との関係強化の道を選んだわけだが、早くも不安の声があがっている。なぜなら、三菱自は社内にタチの悪い“ビョーキ”を抱え、日産であってもそれを治すことは至難の技であると見られているからだ。
「悪い話」が上に上がらない社内風土
三菱自動車の燃費偽装問題が会社の存続を揺るがす事態に発展している。
同社は1991年から25年間にわたり燃費の不正測定を続けてきたことを明らかにしているが、その間に「リコール隠し」など何度も不祥事を繰り返してきた。
その度に企業風土の刷新を目的に外部有識者による「企業倫理委員会」を設置したり、新たな企業理念を制定したりしたが、結果的に絵に描いた餅に終わった。
なぜ不正が長年続いてきたのか。
その原因について同社の経営陣は外部の特別調査委員会に委ねるとして、詳細を明らかにしていない。
しかし、記者会見での経営陣の発言にはかなりの違和感を持った。不正が発覚したきっかけは昨年11月、軽自動車分野で提携する日産自動車が燃費を独自に調べて数値に開きがあることを指摘されたことに始まる。
それを受けて三菱自動車が社内調査をして不正がわかったのが今年の4月。相川哲郎社長に報告したのが4月13日。
日産の最初の指摘から半年を過ぎ、しかも社内調査の結果を待って社長に報告するのはあまりにも遅すぎないか。20日の夕方の記者会見でこれに関して相川社長はこう答えている。
「不正を認識してから報告が来るまでの時間はそれほど遅くなかったが、いま思うと悪い話は早く上げるべきだった」
この発言でわかるのは、日産の指摘は部門内で留められ、社長の耳に届いていなかったこと。加えて、良い話よりも悪い話を先に上に報告するのが危機管理の常識である。
ところが、このことが経営陣の間で徹底されていなかったことを露呈している。「リコール隠し」事件で学んだはずの危機管理意識が経営陣の間でも共有されていなかったことを物語る。