三菱自社長は開発部門出身の技術者なのに

リコール隠し事件の教訓を問われた相川社長は、

「社員一人一人のコンプライアンス(法令遵守)を徹底することの難しさを感じている。じくじたる思いだ」

と、今回の責任を社員に帰すような発言をしている。

じつは相川社長は開発部門出身の技術者であり、開発部門の責任者を務めていた時期もある。軽自動車だけではなく、他の車種についても長年にわたる不正が続いていたことを認めた26日の記者会見では不正の責任についてこう述べている。

「(不正の)認識がありながら誤った試験のやり方が続いてきた理由はよくわからない。『これでいいんだ』と思ってやり始めたのが、そのまま伝承されて、疑われずにやっていた可能性がある。(燃費試験のやり方やルールは)私はまったく承知していない。燃費試験は実務の仕事で、担当者以外は通常は関与しない。車の開発責任者がこのことを知らないと、開発の取りまとめができないわけではない」

燃費試験を担当するのは実務の人間であり「開発責任者が燃費試験のルールを知る必要はない」と、開き直っているように聞こえる。

だが、燃費競争の中で試験結果は車の販売を左右する大きな要素である。事実、他社の燃費を念頭に目標燃費を5回繰り返し上方修正し、担当の執行役員も燃費を開発目標として強く意識していたと認めている。

それほど燃費が重要な指標にもかかわらず、現場の担当者に任せきりにしていたということは、明らかにセクショナリズムの弊害を露呈していると言えるだろう。

また、誰が責任者なのかという責任の所在もわかりにくい。開発の総責任者の中尾龍吾副社長は不正の動機としてライバル車を意識したのかという記者の質問に対してこう答えている。

「(ダイハツの)ムーヴの数字をもとに燃費の数値を提案した可能性はある。開発プロジェクトの責任者からの提案だった。競争の激しい市場の中で戦うため(燃費を)こういう風に上げたいということだった。上からこうやれと言ったのではない」

問題となっている不正な測定に関して上からこうやれと言ったのではなく、あくまで「こういう風に上げたい」という提案だったと言うが、誰がどんな仕事にどこまで関与しているのかが非常にわかりづらい。