日常のちょっとした習慣に着目し、正しく実践すればあなたの頭は冴えわたる! 「男性・女性に共通する」脳の仕組みを解明しよう。
「朝2時間」の習慣が、なぜ人生を変えるのか
アイデンティティの違いは、いわば脳の違いだろう。その人をその人たらしめるもの、それは神経系の中枢である脳の「仕組み」であるに違いない。
ここ数年来の脳ブーム。現代社会には「脳を鍛える」「脳に効く」といった言葉が氾濫し、次々に新しい効能をうたう商品や本が発売される。しかし、そもそも未知なる“装置”を易々とバージョンアップすることなどできない。
脳神経外科医・築山節氏は、日々のちょっとした習慣によって、脳の機能が最大化することもあれば劣化することもある、と語る。習慣――つまり、長い間繰り返すうちに、そうするのが決まりになったことは何なのか。それにより、人生さえも大きく変わる可能性があるということなのである。築山氏はこう語る。
「多くの人が侮ってしまうのは、朝の時間の過ごし方です。これが、脳に極めて大きな影響があるということをみな軽んじています。私の患者さんには大手企業の管理職の人や、キャリア官僚なども多いですが、彼らの主な訴えのひとつが、最近どうも“頭が冴えない”というもの。会議で人の話の要点をうまくつかめない、いいアイデアが浮かばない、と。診察すると、特に健康状態に問題はないのですが、残業などで帰宅時間は一定ではなく、そのため起床時間も一定していないことが目立つ。ぎりぎりまで寝て、タクシーで会社へ行く人さえいます。それでは頭が冴えないのも無理はありません。だから、そういう人には病気ではなくても、早起きして朝一番に病院に来るよう仕向けることもあります」
さすがにタクシー出社とまでいかなくても、フレックスタイムで出社時間は日によってまちまちという向きは少なくないだろう。また、大量の仕事やノルマなど重圧のストレスで知らずのうちに体に疲労が蓄積されていく。
そうしたなかでしばしば崩れるのが朝時間のリズム。とりわけ睡眠時間や起床時間と頭の冴えとの関わりについて築山氏は次のように強調する。
「患者さんによく言うんですが、人は、朝がきたら、違う人になるんですよ。脳と体は睡眠によって修復されます。少し大げさに言えば、生まれ変わる。その修復をよりよくするには、どうしたらいいか。それは、しっかり寝ること。人により長短の個人差はありますが、十分で上質な睡眠をとることで脳を休ませるのです。ですから、遅くとも12時前に就寝し、6時間以上は寝る。そして、起床時間を一定にする。当たり前に思えるこの生活リズムをしっかり確立して、生活の原点をつくることが脳活動を安定化させるためにも大事です。朝時間のリズムを失うことは、強い言い方をすれば痴呆予備軍になるリスクがあると私は考えています」