またしても3日坊主……。早起きが長続きしない人は多い。とりわけ「最初の1週間」で半数近くが挫折する。その対策法を、脳科学と習慣化の専門家に聞いた。

挫折原因1
「目覚まし時計に依存」

▼傾向

目覚まし時計の音で強引に起きるのは、実は人間本来の目覚めのメカニズムに合わないと医師で東京理科大学客員教授の吉田たかよし氏はいう。

「人が目覚める方法は、2つ。音によるものと、光によるものです。理想的なのは、後者の光です」

大音量の時計のベルはやかましいから目は覚める。だが、それは後述する「体内時計をオン」にするのとは原理が違う、と吉田氏。そもそも人類(ホモサピエンス)が絶滅せずに生き延びることができた理由のひとつは、危機回避能力があったから。「音への俊敏な反応」もそのひとつだ。例えば、夜行性のトラの足音を聞き取り、瞬間的に跳び起き、退避することが可能なのだ。

「ただし、目覚まし時計の音は、脳にある脳幹網様体という部分を一時的に刺激し、“緊急事態”を知らせますが、実際はトラがいるわけではないので、起きなければならないモチベーションに乏しいわけです。生命の危機でないとわかると安心して2度寝するようなことも起こります」(吉田氏)

一方、光は脳にどんな影響を与えるのか。よく知られているのは、朝、日光を浴びると脳内で睡眠ホルモンのメラトニンから、覚醒に必要なセロトニンに切り替わるという仕組み。さらに興味深いのは、原始の時代から進化してきた人体の脳と、光と、覚醒との関わりだ。

「光(日の出)によって人が自然に目覚めるようになっているのは、やはり外敵に襲われないようにとの本能ゆえ。太陽が地平線から出てからではなく、むしろ出る前、東の空が白んでくる頃の光が脳の体内時計のスイッチを入れるのです。さあ、朝だ、起きるぞと体のほうから目覚め始めるのです」(同)

日の出前の青白い光は、可視光線のなかでも短い波調である470ナノメートルくらいの光(バックライトにLEDを使うPCやスマホなどから多く発せられるブルーライトと同質)。この朝の光に脳内の光感受性網膜神経節という視細胞が反応し、視床下部の視交叉上核(体内時計)を“起動”し、脳を興奮させるという。

「音でも光でも、人体は覚醒しますが、体内時計にまで深く作用するという意味で、光を利用するほうが継続して早起きをするには効果的なのです」(同)