一自治体外局が日本の観光庁を上回る予算動かす

ハワイはどうか。プロデュースの総合力という点で見逃せないのが、HTA(Hawai'i Tourism Authority)の存在である。HTAとは、ハワイ州政府の産業系の外局で、98年に創設された。HTAの役割は、全州的な観点からハワイ観光の政策と方針を定め、観光関連の体験プログラムやイベントの提供、情報発信、人材開発、市場調査、航空会社などへの新規就航の働きかけ、さらにはハワイの自然や伝統文化の保全、治安向上への協力、そしてコンベンション・センターの運営などを担うことにある。

日本に対しては、HTAは東京にハワイ州観光局(HTJ=Hawai'i Tourism Japan)という組織を設け、旅行会社やメディア、一般旅行者に向けてハワイの楽しみ方や旅の基本情報などの発信を行っている。

HTJ局長のエリック高畑氏にお話をうかがった。HTJは日本において各種の企業や団体との連携を進めることで、今まで以上に多くの人々にハワイに関心を持ってもらおうとしている。

一例をあげれば、HTJは15年から「妖怪ウォッチ」とのコラボを開始、主要キャラクターのジバニャンがハワイのキッズ親善大使に就任している。これは日本のファミリー層を中心としたハワイ旅行者の幅を広げることを目指したもので、親子でハワイを巡りながら、ジバニャンに出会ったり、スタンプを集めたりする企画を提供する。日本側でも、これに合わせて各旅行会社が、「妖怪ウォッチ」を起用したツアー商品の投入をはじめ、各地での関連イベントや各種のキャンペーンが行われている。

14年には、人気グループの嵐のデビュー15周年を記念したハワイ公演が行われた。これも、HTJがコンベンションなどの大規模集客(観光用語で「MICE」という)のハワイならではのあり方を模索する中から生まれたのだという。日本からの多くのファンの参加が見込める公演は、大規模集客を実現するとともに、ハワイを訪れる新たな目的や顧客層を開拓することにもつながる。

HTJはまた、「アロハプログラム」という、ハワイの歴史や文化や自然についてオンラインで学び、スペシャリスト検定を受けることができる公式プログラムを提供している。旅行会社の店舗などで、スタッフ全員が上級資格を持つ場合は、HTJのサテライトオフィスとして認定するという取り組みも始めている。現在では、そのサテライトオフィスが日本全国で10カ所ほど誕生しているという。

日本の観光産業はハワイから何を学ぶべきか。第1に、ハワイの観光産業は、地域の観光資源の魅力を多面的に引き出し、異なる国や嗜好の旅行者の求めに応じた活動を複合的に展開するディスティネーション・マネジメント(DM)を取り入れている。DMの取り組みにはホテルや観光施設や旅行会社などの多くのプレーヤーの参加と協力が必要となるが、HTAはそのリーダーシップを担う組織として設けられている。

第2に、HTAはその活動に年間で実に約120億円を費やす。日本の観光庁の年間予算(日本政府観光局の予算を含む)は100億円ほどだ。人口140万人ほどの地方自治体にすぎないハワイ州の外局が、これだけの予算を動かしている。それが可能なのも、ハワイ州ではホテル税をはじめとした観光関連の税収が500億円を超えているからである。資金力を持つ世界の先進DMの取り組みは、日本で想像する以上に大がかりである。