一方、伊藤氏は、感謝の気持ちは「言葉を添える」ことで伝える。

「例えば、葬儀の場合、香典を持参し、後日、ご遺族宛てに、故人への感謝の気持ちを伝える手紙を書くか、メールを送ります。遠方で参列できなければ、現金書留で香典のほかに手紙を同封します。結婚のお祝いでも、ご祝儀のほかにカードなどで、言葉を添えます。お金は使えば消えてしまいますが、言葉は残るような気がするんです」

伊藤氏は冠婚葬祭に限らず、お祝い事に関してマメなようで、花を贈るときは店に足を運び、相手の好きな花や色を選び、自分でアレンジをする。造花も花の香りの香水をかけるなど、一手間かけると女性に喜ばれるという。

「手紙を書くなど、みなさん、つい億劫に思うかもしれません。でも、誰もが億劫に感じることを行うから、気持ちが伝わるように思うのです。億劫に思うのは左脳の働きです。それに対し、“楽観的に実行する”のが右脳の働きであるのと同様、億劫なことを実行できるのも右脳の働きです。普段から億劫なことを面倒臭がらずに行う習慣をつけると、冠婚葬祭のときも、右脳がすぐ働いて、気持ちを伝えるための行動を起こせる。何ごとも億劫がらず、すぐ行動を起こせることが大切です」

億劫の「劫」は古代インドで最長の時間の単位で「1億劫」は途方もない時間の長さを表す。億劫なことを行うのはその分時間がかかる。「お金で時間を買う」というが、冠婚葬祭に関しては、お金以上に、時間を“奮発”するのが、気持ちを伝える効果的な方法のようだ。

 【稲盛哲学】感謝の気持ちを示す ⇒ 億劫なことこそ習慣づけるべし
佐々木昭人
ファイナンシャル・プランナー。ロムルス代表取締役。
1972年生まれ。生命保険の営業を経て、2007年より現在の事務所を立ち上げ、生命保険のコンサルティングを行う。09年より盛和塾新潟に参加している。
 
伊藤正孝
税理士、ファイナンシャル・プランナー。
1960年生まれ。プライス・ウォーターハウス・クーパースを経て、2004年に伊藤正孝税理士事務所を立ち上げる。稲盛氏の勉強会「盛和塾」では盛和塾横浜の元会計担当事務局を務めた。
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