IT系長者は悲喜こもごも
今年も、不世出の大富豪ともいうべきビル・ゲイツに代表されるIT系創業者の強さが目立つが、すべてのIT系企業が上昇気流に乗っているわけではない。ツイッターは、業績低迷に陥っている。株価の上場来の高値は53ドルだが、2月初旬の4半期決算発表時には13.75ドルという安値をつけ、共同創業者は資産を大きく減らした。たとえばCEOに復帰したジャック・ドーシーは、ビリオネアランキングの下限資産額10億ドルにかろうじてとどまった。
「ベスト10の常連」であるオラクルの創業者ラリー・エリソンも、自社株下落のあおりを食った。2015年には543億ドルだった資産額が、2016年は436億ドル。それでも順位を2つ落としただけの7位である。
いま話題の企業では、シャープ買収に動いた台湾のIT企業ホンハイ(鴻海精密工業)の創業者郭台銘(テリー・ゴウ)は、昨年より5億ドル減の56億ドルで台湾2位、世界228位である。一方、韓国では、“液晶テレビのシャープ”を追い詰めたサムスングループの李健熙(リ・ゴンヒ)会長が韓国一の大富豪で、資産額は2015年より15億ドル減の96億ドル、世界順位は10位下げて112位となっている。
東芝の粉飾決算騒動やシャープの身売り話は、世界をリードしてきた日本のエレクトロニクス業界の落日を象徴している。そんな日本を尻目に、「IT立国路線」をひた走っているのがインドだ。インドの大富豪トップは、3大財閥の「リライアンスインダストリー」の2代目ムシュケ・アンバニ(58)で、前年より17億ドル減の193億ドルで36位。すぐ上の35位に、PC直販の「DELL」の創業者マイケル・デルがおり、実力のほどがわかるのではなかろうか。デルは、わずか1000ドルの資金で創業した。
デルを彷彿させるような日本人起業者が出現して、「フォーブスのビリオネアランキング」の上位に彗星のごとく躍り出る日は、いつになるのか。