五輪目指して7人制挑戦も

選手と記者が交わるミックスゾーン。山田は左ひざに水色のアイシングパックを付けて現れた。どうしたの?と聞けば、「いや、ちょっと打撲で」と言葉を濁した。

「後半の始まりまではすごくいいので、次は後半40分もしっかりやりたいなと思います。みんな、継続的に集中してやっていくことが必要かなと思います」

3連敗にも悲壮感はない。たしかに個々のフィジカル、スキル不足、チームディフェンスの連携の乱れはあるものの、アタックのカタチやリズムは悪くはなかった。あとは我慢、集中力の継続とハードワークである。

3試合を通し、向上してきた部分は「いっぱいあります」と山田は強調する。

「後半のスタート部分はよかったですし、ゲームプランを立ててちゃんと遂行できています。あんまり、ネガティブにはなっていません。いろんなバリエーションがつくれていますし、連係やコミュニケーションもとれてきたと思います」

山田の最大の長所は何と言っても、超ポジティブなところである。下を向かず、いつだって前を向いていく。その姿勢がプレーを伸ばしてしまう。シンガポール、南アフリカを転戦しながらのハードスケジュールでの試合がつづくが、気力さえ萎えなければ、きっと勝利はつかむことができる。自身の力量アップが日本代表の底上げ、トップリーグの底上げにもつながるはずである。

「(勝つためには)取り切るところの集中力でしょう。チャンスに集中して、もう一段階、みんなのエネルギーを上げられればいいのかなと思います。とにかく、1試合、1試合、チームを勢いづけるプレーをしたい」

そういえば、山田は、リオデジャネイロ五輪に出場する7人制ラグビー(セブンズ)の日本代表入りにも挑戦している。サンウルブズとセブンズ代表。陽気な人気者は難儀な挑戦を楽しんでいる風でもある。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
(写真=『ラグビー魂』編集部)
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