岡田副会長が持ち込む「経営感覚」
春。年度が変わり、組織の体制も変わる。日本サッカー協会は田嶋幸三新会長が就任し、副会長には元日本代表監督でFC今治オーナーの岡田武史氏らが就いた。岡田氏は1日の会見で、協会役員や職員の意識を「お客様目線」に変えたいと熱く訴えた。
58歳の田嶋会長が生来のリーダーだとすれば、59歳の岡田副会長は哲学者かつ勝負師といった風情である。チームで言えば、田嶋会長がセンターフォワード、岡田副会長はミッドフィールダーのボランチか。しっかりした理念のもと、岡田副会長が的確なパスを出し、田嶋新会長がゴールを決めていく。
「世界基準」を改革のキーワードに置く田嶋会長に対し、岡田副会長は経営者の経験を生かし、「意識改革」の必要性を説いた。同副会長は、日本代表監督として16強入りした2010年ワールドカップ(W杯)の後、中国挑戦を経て、一昨年から、四国リーグに所属するFC今治の経営にかかわっている。
「(経営では)こういうものを売りたい、こういうことができるばかりじゃだめです。お客様がどういうことを要望しているのか、お客様がどういうことを不満に思っているのか、そういうことに対するソリューション(解決策)が売り上げにつながっていく。これをサッカーに置きかえると、どうもサッカー協会があって、サッカーをやらしてやっているようなイメージがある。そうじゃなくて、多くのサッカーを愛する人たちがいて、はじめてサッカー協会があるのです」
つまりは「上から目線」の協会の職員の意識を「お客様目線」に変えたいということだろう。岡田副会長は正直だ。
「代表監督をやっている時、お客様に心から“ありがとう”と思ったことはなかったですよ。“コノヤロー”と思っていましたから。でも、FC今治で社長をやって、ホームでの開幕戦に1000人ほどの人が来てくださった時、初めて心から“ありがとう”と感じたのです。感激しました。いろんなステークホルダー(利害関係者)をぜんぶ巻き込んで初めてフットボール。それを、59歳にして気付いたという情けない話なんです」