岡田武史●1956年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、古河電気工業(日本サッカーリーグ)で活躍。ユース代表、ユニバーシアード代表、日本代表にも選抜される。現役引退後は、ドイツへのコーチ留学を経てクラブチームのコーチ、コンサドーレ札幌、横浜F・マリノス、日本代表の監督を歴任し、現在に至る。
今となっても、冷静に考えていれば、日本代表監督は受けなかったと思う。
2007年年末、私はイビチャ・オシム氏の後を受けて、日本代表監督を引き受けた。このとき、私は指導者としての資質を自問している時期だった。
私は、03年から06年まで横浜F・マリノスの監督を務めていた。端から見れば悪くない成績だったと思う。就任1年目からリーグ優勝することができたのだ。ところが、私は全く満足していなかった。
私は指導者として、選手に理論を伝え、納得させることは得意だと思っている。
例えば――。
サッカーでは、ゴールまで直線距離でボールを運ぶことが一番効率がいい。ところが、当然相手は、そうさせないようにその部分の守備を固めてくる。
また、人のいないスペースの使い方も重要だ。相手は中央を守っているので、両サイドにボールを運ぶ。当然、相手のディフェンスはそちらをケアするために広がり、ゴール前にスペースができる。
だから、「外から攻めろ」という指示を出すのだ。自分でドリブルして目の前の相手を抜いて中に行きたいという選手も、私の指示が聞こえているので、仕方がなく外に出す。すると、ゴールに繋がる。これは確率の問題だ。
それが続くとどうなるか――。選手はボールを持った瞬間、中を見ずに自動的に外に出すようになってしまったのだ。これでは本末転倒である。
確かに、優勝という結果は残った。しかし、本来サッカーとは、ピッチの中の選手が考え、判断するスポーツである。そうした個を持った選手でなければ、世界で戦うことができない。確率論を選手に教えることが本当の指導者なのか。このサッカーを続けて、本物のサッカー選手を育てることができるのか。
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