そうなるとどのような病気の患者が増えるのだろうか。松田教授らが開発したAJAPAシステムを利用して、東京都台東区を例に、入院患者の推計をしたのが下の表だ。75歳以上の人口が急激に増える25年に約2割増になるのは、肺炎など呼吸器系の病気、そして脳卒中で、お産だけが急激に減る。ここには項目がないが、大腿骨頸部などの骨折も増えるとみられる。

23区内では、骨折、脳卒中の急性期治療後のリハビリや長期的なケアをする病院や施設は今でも不足している。治療をする病院は23区内にはたくさんあっても、短期間で退院させられて行き場を失い右往左往したり、満足なリハビリもせずに自宅へ帰され、寝たきりになったりしかねない。「リハビリや長期的なケアに関しては、現在は山梨や栃木、茨城など近隣の県の病院や施設を利用して何とかなっているが、30年にはそれらの県でも地域住民の需要が増え、23区民の世話までできなくなる可能性が高い。悲惨な目にあいたくなければ、元気なうちに、地元へのUターンを検討するなど東京脱出を考えたほうがいいのではないでしょうか」と高橋教授は指摘する。

23区内では、医療、介護とも危機状態になっている墨田区、江東区、江戸川区も含め、都心にひしめく大病院へ行けば急性期医療に困ることはなさそうだ。しかし、急性期医療が過剰になると、経営のために過剰な治療や薬の使用が行われる恐れがあるので要注意である。

一方、大都市でも大阪市、広島市、北九州市は、それなりに需要が増えるものの、現在の医療資源、介護施設をうまく活用すれば30年になっても医療難民の発生はないと予測される。大阪市は、東京23区に比べ75歳以上1000人当たりの介護施設数が1.5倍あり余力がある。北九州市に至っては、人口が緩やかに減り医療資源が過剰になる可能性もあり、東京からの移住先候補に入るかもしれない。

出所:「二次医療圏データベース」「AJAPAシステム」(入院患者数)

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