海外依存度が高い火力発電の弱点
電力の安定供給と経済性を考えると、現在行われている発電のコストを考えないわけにはいかない。政府も昨年、30年時点での「望ましい電源構成(ベストミックス)」を決定するなかで、それぞれのコストについての検証している。具体的には、原子力、火力、再生可能エネルギーといった電源別にモデルプラントを用いて、キロワット時(kWh)の発電コストを算出した。
安いものから順に列記すると、原子力10.1円、水力11円、石炭火力12.3円、LNG火力13.7円、地熱16.9円、風力21.6円、太陽光24.2~29.4円、石油火力30.6~43.4円となっている。原子力が安いということは、以前から指摘されていたにしても、現在、日本の発電は石炭を主力にしているが、石油火力の意外な高さは特筆される。
しかも、原子力の発電コストは、14年モデルプラントの設備利用率を70%と設定したものだという。そして、その内訳は、資本費(設備費)や運転維持費、燃料費といった基本的な項目に加えて、立地交付金などの政策経費が含まれる。さらに原子力のコストには、新規制基準に基づく追加的な安全対策費や、事故時の損害賠償や除染などの事故リスク対応費用、使用済燃料の再処理や最終処分の費用などいったバックエンドコストなども含まれているという。
もちろん、火力にも再エネにも、それぞれ一長一短はある。火力の石炭、石油、LNGは安定した運転が可能なことから、重要な電源として期待できる。半面、調達を海外に依存していることから、原油価格や為替相場等の価格面の問題のみならず、中東情勢等の調達リスクをも抱えている。加えて、原子力や再エネにないCO2対策費が必要になる。
もうひとつ、想定しておく必要があるのは、発電設備を取り巻く技術的イノベーションだ。この動向に資本コストあるいは燃料コストは影響を受ける。具体的な動きが、アジア新興国での太陽光パネル製造コストの低廉化である。もちろんそれは、プラス、マイナス両面に働くこともあるが、いずれにしてもコスト計算には極めて重要なファクターとなる。
いま日本が掲げるエネルギー政策の基本方針は「S+3E」である。福島原発の事故を踏まえた安全確保(Safety)の「S」を大前提に、エネルギー安定供給(Energy security)と経済性(Economy)、環境保全(Environmental conservation)の3つの「E」の同時達成をめざすという考え方だ。そのなかで、発電コストをどうバランスしていくかが求められている。