原油安は日本の電力供給を安定化させない
東日本大震災から5年が経過した。この間、原子力発電の完全停止、それに伴う天然ガス(LNG)や石油など化石燃料の輸入で、発電コストは急上昇した。発電かかる燃料費は東日本大震災前の10年度には電力9社で合計3.6兆円だったが、13年度は7.7兆円と2倍強の増加となっている。実質4兆円以上増えた計算だ。消費税を1%上げると約2兆円の増税というから、燃料費増加分は消費税2%に相当する。
当然、これは企業や家庭の電気料金にも直接影響してくる。料金を決める仕組みが次のようになっているからだ。業界団体は「原価主義の考え方に基づき、電力各社の電気料金は、総括原価方式で決まる。すなわち、能率的な経営の下における必要な原価に適正な事業報酬を加えて算定する。その総コストのなかで最も大きいのが、発電をするための燃料費だ」と説明する。
この間、電力消費がピークとなる夏場を迎えるたびに、原発の再稼働が議論されてきた。これまでに鹿児島県の川内原発が再稼働。福井県の高浜原発が動き出したものの、原子炉が自動停止し、その後、運転差し止めになっている。今後の再稼働予定の原発にも少なからぬ影響を与えかねず、当面は現在の電源構成のままという状況は大きくは変わらないだろう。
幸運なことに、原油相場が2014年の夏をピークに急激に下落し、今年に入っても、1バレル=30ドル前後で推移している。それに伴ってLNGにも割安感が出ている。このことは、発電の約9割を火力に頼っている日本にとってはプラスに作用する。しかし、エネルギー関連シンクタンクのアナリストは「こうした傾向が中長期的に持続するとは思えない。世界の石油需要が伸びていることを念頭に置けば、来年あたりは70ドルを見込んだほうが無難だ」と警鐘を鳴らす。