病院への導入費用が「無料」である理由

【弘兼】現在、医療用モデルはドイツの施設で機能改善治療用として使われているそうですね。ただし、1台当たりの価格は安くないでしょう。よく受け入れてくれましたね。

(左)腰部負荷軽減用HAL。病院・介護施設や作業現場での負荷を軽減する。(右)ドイツでの機能改善治療の様子。欧州では医療機器として認可されている。

【山海】私たちは病院などに対して、HALとHALを正しく使うことができるインストラクターをセットで提供しています。さて、1セットでいくらだと思われますか?

【弘兼】数千万円程度でしょうか……。

【山海】答えは0円、無料です。

【弘兼】えっ? サイバーダインの利益はどうなっているんですか?

【山海】ドイツではHALを使った機能改善治療に公的労災保険が適用されます。約1時間の治療で1回あたり500ユーロ。60回で3万ユーロ(約420万円)が標準的な治療パッケージです。これは全額について保険適用が受けられます。病院には1回あたり500ユーロが保険機構から支払われます。そのうちサイバーダインは40%の200ユーロを使用料としていただきます。使用料はかかりますが、これは患者の自立を助けるものです。HALを使った結果、ヘルパーや看護師の仕事は減り、保険機構は費用を圧縮できます。

【弘兼】患者、病院、保険機構のいずれにとってもメリットがありますね。

【山海】通常、日本ではHALのような機器を開発した場合、まずは国などから補助金を獲得したうえで、いくつかの施設で実験的に使用してもらうことでデータを集めます。しかし、このやり方は時間がかかる。そこで私たちは、まずレンタルという形で医療・福祉施設にHALを提供し、データを集めることにしました。現在、国内外の約170施設から、個人情報を除いたデータが、毎日、研究開発施設のあるつくば市に送られてきています。いわゆるビッグデータです。

【弘兼】しかし、残念ながら、まだお膝元の日本では医療機器として認められていません。

【山海】現在、日本では医師主導治験の実施段階が終了しました。データがまとまり次第、医療機器の承認申請を行いたいと思っています。(※2015年11月、医療機器に承認)