学習能力の高い人はトップを走れない

【弘兼】ロボット市場には世界的な注目が高まっていますね。例えばグーグルはロボット企業の買収に資金を投じ始めています。

【山海】グーグルが買っているのは、ほとんどが軍用企業ですね。ミリタリー・ロボットを使えば、兵士を殺さずに戦争ができる。そうした意味では成長分野かもしれない。一方、私たちがフォーカスしているのは、医療、福祉、生活といった分野です。軍事には手を出しません。議決権種類株式での上場には軍事転用を防ぐという狙いもあります。

【弘兼】大学教授という立場から、後進の育成はどのようにお考えですか。

山海嘉之社長「99.9%の研究者は、研究を論文作成の道具に使い、製品化は諦める。研究を社会に実装するには、生みの親が自分で育てるしかない」。

【山海】まさにそれが、日本で唯一、私が上場企業の社長と大学教授を兼ねている理由です。これまで「追いつき追い越せ型」の人材が日本を発展させてきました。アンテナを張って、世界の動きをぱっと掴んで、フォローアップしていく。学習能力の高い人ほど優秀だとされてきた。しかし、こういう人では、トップに近付くことはできますが、トップを走ることはできません。

【弘兼】「追いつき追い越せ型」には、クリエイティブ能力が欠けている。

【山海】そういうことです。これからの人材は「開拓型」でなくてはならない。トップになる人は、手探りで未知の分野を開拓する必要があります。自らが発信して行動できる人間を育てなくてはいけません。

【弘兼】日本の教育の課題ですね。

【山海】サイバーダインでは、研究開発、産業創出、そして人材育成を一体的に同時展開していくことが大切だと考えています。この3つはセットなのです。日本が次のフェーズに行けるかどうかは、こうした未来開拓型の人間をつくれるかどうかにかかっています。

【弘兼】コツはありますか?

【山海】弘兼先生もそうですけれど、クリエイターというのは生まれにくくて、育ちにくくて、壊れやすい。いじらず、かき回さず、じっくりと見守ることですね。

【弘兼】才能ある人間には余計な手を出さない。どこの世界も同じなのですね。