一生懸命、丁寧に書いているのに、次につながらない手紙やメールが多い。商売を広げる文章と、ごみ箱行きの赤点文章の違いは何か。
感謝していることは何なのか明確に
例文集からそのまま抜き出したようなお礼状は、なんの印象にも残らない。印象に残るお礼状にするには、具体性が重要だ。感謝しているなら、どんなことに感謝しているのか、話を聞いて感動したというなら、どの話にどのように感動したのか、できるだけ具体的に書くのだ。
具体性を持ったお礼状であれば、「次にお会いするときには、こんな話も伺いたい」というように続けることもできる。受け取ったほうも、「なるほど。前回は私の話のこの部分がためになったようだから、今度はあの話をしてあげよう」とか「その話に関して私は門外漢だから、詳しい別の人を紹介してあげようかな」というふうに、きちんとリアクションを返すために、いろいろと考えてくれる。
ビジネスでお礼状を出すのなら、ただ単に感謝の気持ちを表すだけでなく、次につながるものにしたい。お礼状の送り主が何を求めているのかをはっきりさせることで、双方にとって実りある「次」へとつなげることができるのだ。
北尾吉孝社長が添削! 「次につながる」お礼状
【×BEFORE】
(1)次の文で「弊社の活路が見えた」というわりに、具体性がない。「訪日外国客」といっても、どの国のどのセグメントに向けて今後何を取り組んでいくのか。
(2)何が聞きたいのかが伝わらず、このままではただの食事の誘いに終わってしまうし、相手も対応しづらい。
【○AFTER】
(1)話した中のどの話が勉強になったのか明確であり、手紙をもらったほうも、今後どんな情報を提供してあげればよいのか考えられる。
(2)会社として実際にどう動きだしたのかが明確であれば、さらにアドバイスしやすくなる。
(3)食事を一緒にしながら、何について話を聞きたいのかが明確だ。手紙をもらったほうも、ケーススタディをより詳しく話せるよう準備をしようと思える。
(4)自分の名前が自署であり、また手書きで一文あると、感謝の気持ちがぐっと伝わる。
1951年生まれ。兵庫県立神戸高校卒。慶應義塾大学経済学部卒業後、野村証券入社。92年事業法人三部長。95年ソフトバンクに転じて、常務取締役に。99年ソフトバンク・インベストメント(現SBIHD)設立、代表取締役執行役員社長。