原発を今後も続けるべきか、あるいは廃止すべきか。最後にはツケを払わねばならない国民がこれを判断するためには、「原発がなくなれば電力が足りなくなる」という政府と原子力産業の主張が事実か否かをまずは知る必要がある。知る努力を怠れば、その判断が再び官僚と原子力産業の手に委ねられることになるからだ。

新聞やテレビなど多くのメディアが、今も電力不足への警鐘を鳴らし、記事の行間で原発の必要性をほのめかす。なかには、「製造業追い込む電力不足を放置するな」との見出しで「原発は電力供給の3割を占め、休止中の火力発電所の再稼働や太陽光などの自然エネルギーでは補いきれない。当面の電力不足の拡大を防ぐには原発を再稼働させるしかない」(6月17日付日本経済新聞)とストレートに原発再開を主張するメディアも。

果たして、これらの主張は事実に基づいているのか。

東京電力の作成データ「エネルギー別発電設備出力」には、同社の電源別出力が記載されている。電源を大別すると「水力」「火力」「原子力」「新エネルギー等」の4つ。左記は、2009年度の出力設備としてそこに記されている数字だ(カッコ内は他社からの受電を含んだ電力)。

【水力】898万7000kW(1463万8000kW)
【火力】3818万9000kW(4486万2000kW)
【原子力】1730万8000kW(1818万8000kW)
【新エネルギー等】4000kW(4000kW、他社受電なし)

合計すれば、6448万7000kW(7769万2000kW)。この数字が同社の設備上の発電能力ということになる。ちなみに、新エネルギー等とは「風力」「太陽光」「廃棄物発電」「地熱」「バイオマス発電」のことだ。