不便な交通アクセス。場外市場も未定

アクセスも問題だ。豊洲新市場へは新交通ゆりかもめしかなく、車以外は不便な場所にある。しかも新橋駅始発は午前6時。市場は明け方6時前には活気づく。都は「アクセスについて関係機関と協議中で、はっきりしたことは言えません」(中央卸売市場新市場整備部)と口を濁す。築地は、地下鉄都営大江戸線と日比谷線が通り、有楽町線の新富町駅からも歩いて10分。市場で働く人はもとより、これまで電車やバイク、自転車で買い出しに来ていた料理人は、豊洲には行きにくい。かごを持って、電車で買い付けにいく個人の買い出し人も不便さを訴える。

「豊洲は新橋からでも30分かかる。遠くて大変だから、もう行かなくなるだろうね。肴の値段にもはねかえってくるかもしれない」(港区の居酒屋店主)

中小の買い出し人たちは、買いにいけなくなるか、回数を減らすなど買い出しの方法を変えるケースも出てきそうだ。街場の寿司屋は負担が増すことになる。

老朽化が進んだ開放型の築地市場より、閉鎖型の豊洲市場のほうが室温や衛生面の管理がしやすいとはいえ、「量販店には買いやすくて効率のいい市場になるけれど、中小小売店はコストがかかる。スーパーやチェーン店だけで食文化が守れるのか」と東京魚市場卸協同組合の関係者は嘆く。

築地の魅力は、競りで有名な場内市場だけではなく、飲食店や専門店が並ぶ場外市場、いわゆる「築地文化」にもある。当初は豊洲も市場の新鮮食材を提供するフードコートや専門店などが同時にオープンする予定だったが、建設・運営する事業者が採算性を理由に撤退。都は再入札を行っているが、当面は場内だけのオープンとなり、「輸送トラックが出入りする単なる業務施設になってしまう」(東京魚市場卸協同組合関係者)と、競りの行われる場内市場と一体の「築地文化」が継承されないことを懸念する声も強い。

(時事通信フォト=写真)
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