港区と足立区「富裕層になる人」が育つ街は?

では、もっと近場、例えば通勤エリア内などでこれと同じ貯金効果を生むことはできないでしょうか?

できます。

東京都民の平均所得*は、トップが港区で932万円、最下位が足立区で319万円です。ただし、これは納税義務者の平均ですので、世帯収入でいくとこれの何割り増しかにはなると思います。

*都総務局行政部区政課「平成26年度市町村税課税状況等の調査」の区の総所得を納税義務者数で割って算出。

同じ東京23区内においても、平均所得には実に3倍の格差があります。

そして、各区の生活関連施設(スーパーなど)の価格相場は平均年収と一定の相関関係があります。食料品の価格相場や、駐車場の10分あたりの額、幼児教室の授業料など何もかもが大幅に違っています。レートが異なるのです。

現在、港区に住む平均的な所得の人には、知らずのうちに消費を増やす方向への圧力がかかっていると想像できます。しかし、前出の教授の論を当てはめると、同区からもっと平均年収の低い他の区へ移り住めば、消費を減らす方向への同調圧力がかかってくるということです。

では、同調圧力とは具体的にどんなものでしょうか。

例えば、引っ越した先の地域で自分の子供だけが高級ブランドの服を着て、“浮いて”しまったら……。学校の級友からいじめを受けるかもしれない、と母親は感じるかもしれません。子供だけでなく、ママ友からの壮絶ないじめの可能性も否定できません。妬み嫉みのたぐいで、あることないこと陰で悪口を言われるかもしれません。そんな危険を察知して、「脱ブランド化」します。同調することで危機回避するわけです。

最初は経済格差にまつわるそうした周囲の反応に当惑することもあるでしょうが、目立つことを避けて周囲の人たちの生活水準に合わせることに抵抗がなくなれば、案外楽なものかもしれません。例えば、住む家はあれこれ物件選びに悩むことなく賃貸に決定、外食は基本ファミレス、車は所有しないか軽自動車という具合に、着るのは◯◯、遊ぶ場所は△△、旅行は□□とダウングレードしていく。

年収932万円だけど、年収319万円生活のでき上がりです。