年収1000万円でも貯金ゼロ。そんな世帯は決して少なくない。浪費を浪費と思わぬ家計の習慣によって、いずれ想定外の悲劇を招くこともある――。

高収入者は「身の丈に合わない」生活を送る

もちろん老後破産は避けたいが、中年破綻はもっと避けたい。

40、50代の働き盛りの世帯で破綻する家計というと、無駄遣いをしがちだったり、家計簿をつけていなかったり、ちゃんと家計管理ができていない場合を思い浮かべることが多い。

しかし、どちらかといえば節約志向で、家計管理をきちんとしている場合でも、破綻はあり得る。もともと年収が低かったり、収入に対して教育費や住宅ローン・住居費の割合が高かったりすると、何らかの事情によって収入が途絶えると、困窮してしまう可能性が高いのだ(前回の記事 http://president.jp/articles/-/17057 で触れたように、(1)世帯主や家族の急病、(2)親の介護による離職、(3)リストラなどで収入が激減もしくは0円になるようなケース)。

また年収が高い場合でも、中年破綻は無縁ではない。

収入が多いと、支出もそれなりに多くなるものだ。家族や友人、周囲へのプライドや見栄などから、つい身の丈に合わない生活を送ってしまいがちなのである。

FP相談などで家計収支を見ると、毎月マイナスなのだが、なんとか生活できているという人は少なくない。ボーナスを充当したり、貯蓄を取り崩したり。要するに、毎月の支出が収入を上回っていても、経常的な収入があれば、クレジットカードによる買い物やローンやキャッシングもあまり気にせずにしてしまっているのが破綻しがちな家計の典型だ。

例えば、こんなケースだ。

夫婦共働きで世帯年収が高い時点を基準に、予算以上の住宅ローンを組んだ。しかし、その直後に妻が妊娠。出産前に離職して収入が1人分減り、キャッシュフローが回らなくなって……、歯車は狂い始める。

さらに、家計が悪化の一途を辿っているにもかかわらず、学歴や収入が高いと、妙なプライドが邪魔をして自分たちが置かれた現実に向き合うことができないケースも少なくない。その点では、年収が高い人ほど「中年破綻」するリスクは高いといえるかもしれない。