「東京23区」では介護難民が深刻化

残念ながら三大都市圏について、余裕のある地域は限られている。

今回、「医師不足」では、それぞれの2次医療圏の75歳以上の「医療需要」の伸びに応じて評価している。医療需要とは、1人当たりの医療費をもとに将来の需要を推計する指標だ。医療需要は高齢者ほど高くなる。65歳未満の医療需要を1としたとき、75歳以上は5.7、つまり後期高齢者は勤労世代に比べて6倍近い医療費がかかっていることがわかる。

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後期高齢者の医療需要は約5.7倍

今回のランク分けでは、医療需要に2010年から30年までの後期高齢者の増加率を当てはめた。その結果、最悪となったのは埼玉県の「春日部市、草加市及び周辺部」の250%で、続いて「千葉市」の246%、「相模原市」の236%となった。いわゆる首都圏のベッドタウンが最も危険な状態に陥ることが予想されている。

さらに「介護難民」は、首都圏でほぼ全域が絶望的な状況だ。今回のランク分けでは、2010年の高齢者向け住居数(老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設など)を基準に、2030年の75歳以上の人口推計との比較で評価した。2010年の全国平均は、後期高齢者1000人に対し、住居数の平均は約120床となっている。これに対し、2030年時の推計で最悪となった「新宿区、中野区、杉並区」は1000人に対しわずか37床だった。さらに少ない順に、滋賀県の「草津市、守山市、栗東市、野洲市」の41床、埼玉県の「川越市、東松山市及び周辺部」の43床、「品川区、大田区」の43床となった。

医療、介護のどちらにも、首都圏に最大の危機が迫っていることが、こうした数値からうかがえる。なお医療と介護では地域によって若干の差がある点に注意してほしい。これは大病院が都心に集中していることが影響している。つまり医師不足に悩まされるのは大都市近郊、ベッドタウンが特に顕著であるのに対し、介護難民は大都市全域で発生する恐れがある。