「がんになる人が目立つ」

こうした“苛酷”な環境にいるからでしょうか、日本ケアラー連盟代表理事の牧野史子さんは「老親などを介護しているケアラーの方が身体を壊してしまうケースをよく見る」そうです。

しかも、「とくに目立つのが、がん」だと牧野さんは言うのです。

「ケアラーでがんになってしまわれる方がとても多いという印象があります。がんの発症要因のひとつはストレス。介護することで、一般の人以上に大きなストレスがかかっていることが関係しているのではないか。正式な統計はありませんが、そう感じています」

たとえば、老親の介護をひとりでしている方が、がんで余命半年などと宣告されることは珍しくないそうです。介護に時間を取られ、健康診断やがん検診を受ける時間がつくれなかったのかもしれません。

親を看取るまで頑張ろうと思っていたのに、自分が先に逝けば親はどうなってしまうのか。その方の心中を察するに余りあります。牧野さんたちもがんに罹患したケアラーの方の話を聞いていると、「切なくなる」と言います。

「こうした悲劇的な状況に陥らないためにも、そしてよりよい介護をするためにも、ケアラー自身、健康には常に気をつけておかなければならないのです」(牧野さん)

ただでさえ肉体的に疲れているケアラーは様々な悩みを抱え込んだまま要介護者と向き合います。昼も夜も。中には、孤立し悩みが増幅され、介護うつのような症状を発症するケースも少なくありません。

そこで、重要となるのが前回ご報告した「ケアラーズカフェ」のような同じ境遇の人が悩みを打ち明けられる場所です。そこではアドバイスを受けられますし、誰かに話を聞いてもらうことで少しは気分も晴れるかもしれません。「ツラいのは自分だけじゃないんだ」と思える効果もあります。

ケアラーは介護の現場でケアマネージャーやホームヘルパー、訪問看護師など、その道の専門家と接することが多いです。でも、彼らは他にも多く利用者を担当しており、所定のサービスが終われば立ち去ります。なかには親切にアドバイスをしてくれる人もいますが、悩みを話せる信頼関係を築けないタイプもおり、現実的には相談相手になってもらうのは難しいわけです。

よって、こうしたケアラーのための“駆け込み寺”を増やすことが急務なのですが、現状は全国で20カ所ほどと少ない。それも大半が週に1回とか、月に2回と開設時間は限定されており、誰もが駆け込める場にはなっていません。ほとんどのケアラーは孤立したまま放置されている、といっていいでしょう。