介護者に絶大な人気の「手帳」

それでも、サポートはゼロではありません。

日本ケアラー連盟などが制作した「ケアラー手帳」がケアラーの間で話題になっています。A5版、26ページの薄い小冊子ですが、精神的に追い込まれたケアラーの気持ちを楽にする言葉や救いとなるアドバイスなどが載っているのです。

手帳は日本ケアラー連盟のサイトでも購入できる。(http://carersjapan.com/

悩み孤立し弱っているケアラーにとっては、ほんの些細な情報でも気持ちの支えになるもの。同手帳には、「1人でかかえこまないで介護仲間をつくろう」「自分をほめてあげよう」「がんばりすぎない」「健康に気をつけ自分を大切に」「(要介護者に)腹が立ってあたりまえ」といった同じ当事者目線の本音ベースの声も掲載されています。

たとえば、「(要介護者に)腹が立ってあたりまえ」の欄には、

「認知症の人には怒ってはいけないと言われますが、身内の介護では、そう簡単にできるものではありません。怒らないで介護できるようになるにはだれでも時間がかかります」

とあります。

私も父の介護経験がありますが、つい怒ってしまい自己嫌悪に陥るということを繰り返しました。もし、そのときこのアドバイスとコメントを読んでいれば、少しは気が楽になったはずです。

介護体験事例もまとめられています。それも、ありがちな「こうしたら問題が解決した」といった美談ではなく、冒頭に紹介したような介護のあるがままのツラさを訴えるもの。だから、ケアラーの共感を呼んでいるのです。

さらに、「気持ちが沈む日に」という欄もあって、ケアラーの気持ちをそっと癒してくれます。

「やらなければならないことが山積みでウンザリしてしまったら、15分とか30分と決めて、気が向くまま過ごす自分の時間を作ってみては?」

「今日は無理せず過ごし、また明日からがんばると決めてしまうのも一手です」

介護で疲れ果ててしまうのは、真面目でがんばり過ぎるタイプの人といわれますが、このアドバイスを読めば救われるのではないでしょうか。

この手帳を見て「さすがケアラーが抱える問題を、よく知っているな」と私が思ったのは、ケアラー自身の健康チェックリストがついていたからです。「最近、あなた自身の健康状態について、気になることはありませんか?」といった設問に答える形式で、「自分の身体や心をいたわる」気持ちを忘れずにすみます。病気が深刻化するのを防ぐことができるはずです。

同手帳は1部200円。手元に一冊あると、少しは介護の悩みや孤立感を和らげてくれのではないでしょうか。日本ケアラー連盟のサイトからも購入可能です。

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