堂々と「妊娠した女性社員はいらない」

では、マタハラ行為をしているのは誰なのか。

職場の直属上司の男性が19.1%と最も多く、続いて上位の役職者・役員(男性)が15.2%となっている。

上司に限らず経営幹部までがやっているということは会社ぐるみの可能性がある。

実際に連合の調査ではこんな事例もある。

《妊娠中に切迫流産となり入院していたところ、会社の人事担当者が「働けないので解雇したい」と書類を持って病院に来た。「傷病手当だけは受給できるようにしてあげるから」と言われ、退職届にサインしてしまったが、本当は働き続けたかった(契約社員)》

妊娠したことを理由に解雇をするのは、明らかな男女雇用機会均等法9条違反だ。流産のショックに打ちひしがれている入院中に会社の担当者が病院まで押しかけ、退職届にサインを迫るのは残忍な手口と言うしかない。

もっとひどいのは次のケースだ。

《妊娠4カ月。産休・育休の制度はなく、過去に妊娠した先輩は全員退職した。産休・育休を取得して働き続けたいと思うが、(勤務先の)院長に相談したところ、「産休・育休制度がないので難しい」と言われた。(正社員・病院)》

何がひどいかというと、ここは産婦人科病院であり、しかも院長自身が産休・育休がないと明言していることだ。仮にも出産に立ち会い「おめでとうございます」と言っている人が内部の職員に、国が義務づけた制度を認めず、堂々と法律違反をしている。

経営者の意識の低さは中小企業に目立つ。

従業員300人の中堅商社の元人事部長は役員から「妊娠した女性はいらない」と言われたことがあると言う。

「役員の中には妊娠した女性社員はいらないとはっきり明言する人もいる。要は育休を取られると、その期間は穴が空くからという単純な理由だ。穴を埋めるために正社員を雇うと、育休から復帰しても2人雇うことになるし、人件費がもったいないからということ。そういう発想をする中小企業の経営者は多い」

こんな経営陣がいる会社では結婚しても子どもを産むことは許されないし、産もうとすれば辞めざるをえないだろう。