疑問10:個人番号カードは、キャッシュカードやクレジットカードとして利用できる?
この公的個人認証は、来年の1月から民間企業を含めた各種サービスへ開放されることが決まっている。実現はまだ先の話になるが、たとえばコンビニのコピー機を利用した印鑑証明、住民票の写しなどの交付や、ネットバンキングやオンラインショップへのログイン、キャシュカードやクレジットカードとのワンカード化などが構想されている。もう一度念を押すが、これらのサービスの利用時に、12桁の番号を使うことはない。あくまでも個人番号カードに搭載された公的個人認証機能を利用するのだ。
ちなみに、9月に財務省が案として提示して話題になった「日本型軽減税率制度」も、個人番号カードの公的個人認証機能を利用したものだ。このときも「個人番号カード=マイナンバー」という誤解があって「国民の買い物まで監視するのか!」と猛烈な批判が起きたのは記憶に新しい。これも、公的個人認証の仕組みが十分に理解されていないことが原因だと思われる。
ただ、個人番号カードによる便利なサービスが始まったとしても、普及には相当時間がかかりそうだ。パソコンから利用する場合は、パソコンに加えてICチップが読める専用のカードリーダーを準備する必要があり、現状ではe-Taxを利用しているなどの理由でカードリーダーを持っている人くらいしか恩恵にあずかれない。それについて楠氏は「スマートフォンに搭載されたICチップの読み取り機能をカードリーダーとして利用できないかと検討している」と明かす。なるほど、AndroidスマートフォンにしてもiPhoneにしても、最近の機種は、ICチップの読み取り機能が搭載されている。「技術的な課題も多く簡単ではないが、実現に向けて努力している」(楠氏)という。
疑問11:もし個人番号カードを紛失したら、どうしたらいい?
心配なのは、そのように便利な個人番号カードを紛失してしまうと、悪用されないかということだ。その場合は、「コールセンターに連絡してもらえば認証機能をストップすることができるので、不正に利用しようとしてもロックがかかり、使えない」(楠氏)そうだ。
そのためにも「個人番号カードは、キャッシュカードのように普段も持ち歩いてほしい。そうすることで紛失したことがすぐに分かる」とも付け加える。
これまでの説明で、マイナンバー制度のセキュリティ面やその運用の実際を、理解していただけただろうか。楠氏が言うように、日本のマイナンバーは、諸外国と比較して後発なだけに、セキュリティ面にはかなり気を使って制度・技術設計がされている。また、「将来便利になる」という部分も、マイナンバーとは別の仕組みの上で運用されることが分かったと思う。
好むと好まざるとに関わらず、そう遠くないうちに全国民のもとにマイナンバーの通知カードが届き、2016年の1月からはいよいよ運用が開始される。新しい制度をいたずらに不安がるのではなく、上手に付き合っていきたいものだ。