私は、松下幸之助さんの『道をひらく』を数ページずつ読むことを20年以上「就寝前の儀式」にしています。本を読んだ回数は100回以上です。だから、何か仕事で悩んだとき、「松下さんなら、どう考えるか」と別の視点で状況を捉えられます。
ロングセラー本には何十年、何百年、何千年と読み継がれてきただけの理由があります。どの時代にも共通する人間や社会の普遍的な価値観が書かれているので、内容が古くなりません。
それは逆に言うと、昔も今も、人は同じようなことに失敗し、躓くということでもある。大事なのは先人の失敗を何度も繰り返さないことです。そのためにも古典を“重読”し、生き方の「軸」を形成することが大切です。
「仕事のスキル」などの知識は一度本を読めば、ある程度理解・実践できます。また、報酬を与えれば外部の専門家の協力を仰ぐこともできるでしょう。
しかし、自分の「生き方・信念」はそう易々と手に入れることができません。頭で理解するのではなく、自分自身の腑に落ちないと本当にわかったとはいえません。結局のところ、腑に落ちるためには、論語などの古典を繰り返し読むしかない。もちろん、自分の生き方を他人任せにすることなどできません。
ゴルフのスイングを我流でしていると「下手が固まる」ことがあります。やはり基本はきちんと教わったほうがいい。それと同じで、先人から経営やリーダーシップの根本をコツコツと学び、自己と向き合うことが成功への道となるのです。
●小宮式「教養・哲学」学習法
↓お勧めの4冊↓
『論語に学ぶ』安岡正篤=著 PHP文庫
『論語と算盤』渋沢栄一=著 ちくま新書
『ビジネスに活かす「論語」』北尾吉孝=著 致知出版社
『道をひらく』松下幸之助=著 PHP研究所
1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。米ダートマス大学タック経営大学院にてMBA取得。岡本アソシエイツ取締役などを経て、96年同社設立。著書に『ビジネス「論語」活用法』『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術』ほか多数。名古屋大学客員教授。