今こそ松下幸之助に学ぶ、「考え方」の大切さ

新聞を読んでいると、このところ3月期決算の数字の発表が相次いでいます。その中で、以前は大きな赤字に苦しんでいたパナソニックの業績回復も注目されています。

一時は最終損益で7000億円を超す大幅赤字を出していたのが、前期決算では1795億円の純利益を出しています。車載機器や太陽光発電、さらにはファクトリー・オートメーションなどの好調が伝えられています。

経営において非常に大切なことは「企業の方向づけ」です。

名著『道をひらく』(PHP研究所)。「それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道が開けてくる」など、松下幸之助の経営・勤労哲学が存分に味わえる。筆者の小宮氏もこの本を100回以上読んだという。

「何をやるか、やめるか」ということを決めることですが、戦略です。その方向づけを誤ると、場合によっては、企業は崖っぷちにまで追い込まれ、倒産ということにもなりかねません。

戦略立案においては、企業を取り巻く「外部環境」、企業のヒト、モノ、カネなどの資源や商品、サービスなどを他社と比べる「内部環境」の分析が必要ですが、その戦略が「ビジョン、理念」に基づいていることが大原則です。

しかし、この「ビジョン、理念」の大切さを本当に分かっている経営者は、経営コンサルタントとして経営の現場を見ている私からすれば、残念ながらそれほど多くありません。しかし、逆に、この大切さが分かりそれを徹底した経営者は、大成功を収めることも少なくありません。

「ビジョン、理念」において、その中核をなすのは、企業の存在意義、つまり「目的」です。ピーター・ドラッカーも「事業の定義はその目的からスタートしなければならない」と言っています。

「目的」とは、何のためにその事業を行うかということです。それがしっかりとしていないと、経営がぶれるし、経営者はじめ、働く人に使命感が持てないからです。

▼松下幸之助が「会社の命」を知った日

パナソニック(旧松下電器産業)の創業者・松下幸之助さんは、自社が何のために存在しているかという存在意義をはっきりと認識した年(1933年)を「命知元年」として、創業記念式典まで行っています。

実際の創業から14年も経ってのことですが、それだけ自社の存在意義や事業のあるべき姿が分かったことが松下さんにはインパクトが強かったということでしょう。論語に「五十にして命を知る」という言葉がありますが、まさに自身や自社の命を知ったということだと思います。

そして、この「命を知る」ということもそうですが、松下さんは企業経営において、「考え方」や「姿勢」というものをとても大切にされていたことがうかがえます。